中学受験の理科で、用語は覚えている。
テキストの太字も言える。
一問一答なら正解できる。
ところが、模試や過去問になると点が取れない。
保護者からは、
「これだけ覚えているのに、どうして問題になると解けないのでしょうか」
という相談を受けます。
理科では、知識を覚えることは大切です。
植物のつくり。
気体の性質。
天体の動き。
電流や力の決まり。
知らなければ、問題を解くことはできません。
ただし、知識を持っていることと、その知識を問題の中で使えることは同じではありません。
覚えても点にならない子は、知識が足りないのではなく、
「問題文のどこを手がかりに、どの知識を使うのか」
を判断できていないことがあります。
【一問一答で正解できても、入試問題で使えるとは限らない】
たとえば、
「石灰水を白くにごらせる気体は何ですか」
と聞かれれば、
「二酸化炭素」
と答えられる子がいます。
一問一答では、問題の中に、思い出すための手がかりがはっきり置かれています。
一方、入試問題では、
石灰水が白くにごった。
空気より重かった。
水に少し溶けた。
という実験結果から、必要な知識を自分で選ばなければなりません。
一問一答は、知識を持っているかを確認する練習です。
入試問題は、現象や結果を見て、使う知識を選ぶ練習です。
ここには、別の力が必要です。
一問一答が悪いわけではありません。
ただ、一問一答だけで学習を終えると、知識をどの場面で使うのかが育ちにくくなります。
【知識が、ばらばらの言葉として残っていないか】
理科が苦手な子の中には、知識を一つずつ別々に覚えている子がいます。
月は東から西へ動いて見える。
月の形は日ごとに変わる。
月は太陽の光を反射している。
それぞれは正しく言えます。
しかし、
「なぜ同じ時刻に見える月の位置が毎日変わるのか」
と聞かれると、説明できない。
覚えた知識同士が、まだつながっていないからです。
理科では、一つの知識だけで答える問題ばかりではありません。
原因と結果。
条件と変化。
観察した事実と、その理由。
複数の情報を結びつけて考える問題が多く出ます。
知識を増やすだけでなく、
何が変わると、何が変化するのか。
この知識は、どの現象を説明するものなのか。
何と比べると違いが分かるのか。
という関係まで整理する必要があります。
【問題文に用語が書かれていないと、知識を呼び出せない】
理科の問題では、覚えた用語がそのまま書かれているとは限りません。
たとえば、蒸散について問う問題でも、
「蒸散」という言葉が問題文に出てこないことがあります。
葉の表と裏にワセリンを塗る。
一定時間後の水の減り方を比べる。
葉の枚数を変える。
こうした実験条件から、
「葉のどこから水が出ていくのか」
を考えます。
用語を見て知識を思い出すのではなく、実験の設定から必要な知識を選ばなければなりません。
覚えても点にならない子は、
「これは何の単元の問題か」
「どの知識を使う問題か」
を考える前に、数字や選択肢だけを見て答えようとすることがあります。
最初に必要なのは、答えを急ぐことではありません。
問題の中にある手がかりを拾うことです。
【知識は、使う場面と一緒に覚える】
知識を覚えるとき、用語と意味だけを暗記すると、問題の中で思い出しにくくなります。
たとえば、
「蒸発とは、液体の表面から気体になること」
と覚えるだけではなく、
洗濯物が乾く。
水たまりが小さくなる。
水を入れた容器の重さが減る。
といった場面と結びつけます。
知識を覚えるときは、
どのような現象を表す言葉なのか。
どのような実験で使われるのか。
身近な場面では、どこに現れるのか。
似た知識と何が違うのか。
まで確認します。
知識は、言葉だけで覚えるより、使われる場面と一緒に覚えた方が取り出しやすくなります。
【図や表では、条件が一つだけ違う二つを比べる】
理科の問題では、図や表、グラフがよく出ます。
点にならない子は、図表を見ても、すぐに設問や選択肢へ進むことがあります。
しかし、実験問題で最初に見るべきなのは、答えではありません。
何を比べる実験なのかです。
表や図を見たら、条件が一つだけ違う二つを選びます。
たとえば、
光を当てたものと、当てなかったもの。
葉の表にワセリンを塗ったものと、裏に塗ったもの。
温度だけを変えたものと、それ以外の条件が同じもの。
そして、
条件の違い
↓
結果の違い
を一本の矢印で結びます。
「光を当てた」
↓
「でんぷんができた」
「葉の裏にワセリンを塗った」
↓
「水の減り方が小さくなった」
このように、条件と結果を結びつけると、使う知識が見えやすくなります。
すべての数字を一度に読み取ろうとする必要はありません。
まずは、比べる二つを決めることです。
【答えではなく、判断の手がかりを残す】
間違えた問題を解き直すとき、
「答えは二酸化炭素」
とだけ書き直して終える子がいます。
しかし、それでは次の問題につながりません。
残したいのは、答えではなく、その答えを選んだ手がかりです。
石灰水が白くにごった。
空気より重かった。
だから、二酸化炭素と判断した。
このように書きます。
理科の解き直しで確認したいのは、
何を知らなかったのか。
問題文のどの情報を見落としたのか。
どの知識と結びつけられなかったのか。
どの条件の違いを読めなかったのか。
です。
答えだけを覚えるのではなく、
「この情報を見たら、この知識を使う」
というつながりを残します。
【知識不足と、使い方の問題を分ける】
理科で間違えたとき、すべてを、
「覚えていなかったから」
と考えると、暗記量だけが増えていきます。
しかし、間違いには種類があります。
用語そのものを知らなかった。
知識はあったが、問題文から思い出せなかった。
図や表の条件を読み落とした。
二つ以上の知識を組み合わせられなかった。
設問で聞かれていることを取り違えた。
原因が違えば、直し方も変わります。
用語を知らなかったなら、覚え直します。
知識はあったのに使えなかったなら、問題文の手がかりと結びつけます。
図表を読み落としたなら、条件が一つだけ違う二つを比べます。
理科の点が伸びない子に、一問一答だけを増やしても解決しないことがあります。
覚えるべきなのか。
使い方を直すべきなのか。
そこを分ける必要があります。
【一問一答を、逆向きにも使う】
知識を問題で使えるようにするには、一問一答を逆向きにも使います。
たとえば、
「二酸化炭素」
という答えだけを見ます。
そして、
この気体を見分ける手がかりは何か。
どのような実験結果なら、この気体だと判断できるか。
似た気体と何が違うか。
を考えます。
最初は、長い問題を作る必要はありません。
「石灰水を白くにごらせる」
「空気より重い」
という手がかりを二つ書くだけでも構いません。
植物なら、
「蒸散」
という用語を見て、
葉から水が出ていく。
葉の裏側に気孔が多い。
ワセリンを塗った実験で確かめる。
とつなげます。
用語を答えるだけでなく、用語から現象や実験を取り出す。
この逆向きの練習を入れると、知識を呼び出す手がかりが増えていきます。
【同じ知識を、別の問い方で確かめる】
一つの知識を使えるようにするには、同じ言葉を繰り返し覚えるだけでは足りません。
たとえば、てこの原理なら、
左右の重さを求める問題。
支点からの距離を求める問題。
どちらへ傾くか判断する問題。
実験結果から法則を見つける問題。
問い方は変わります。
けれども、
重さと支点からの距離の関係を見る
という考え方は共通しています。
別の問題に見えても、同じ知識を使っていることに気づけるようになると、暗記した内容が点につながり始めます。
ただし、問題を大量に増やす必要はありません。
同じ単元の中で、問い方の異なる問題を一問ずつ比べるだけでも十分です。
【長く説明させなくても、つながりは確認できる】
理解を確認するために、
「なぜそうなるのか説明して」
と聞くことがあります。
説明できれば、理解の確認になります。
ただし、理科の内容は分かっていても、長く説明することが苦手な子もいます。
その場合は、短く確認します。
何が変わったのか。
結果がどう変わったのか。
どの知識を使ったのか。
この三つのうち、一つだけでも構いません。
たとえば、
「葉の裏にワセリンを塗った」
↓
「水の減り方が小さくなった」
と書ければ、条件と結果の関係はつかめています。
長い模範解答を言わせることが目的ではありません。
問題の事実と、使う知識がつながっているかを見ることが目的です。
【親は、暗記量より問題の見方を確認する】
家庭で理科を見ると、
「この言葉は覚えた?」
「昨日やったのに忘れたの?」
と、知識の確認が中心になりやすくなります。
もちろん、基礎知識は必要です。
ただ、覚えているのに点にならない子には、別の確認が必要です。
この問題では、どの二つを比べるのか。
何の条件だけが違うのか。
結果はどう変わったのか。
答えを選ぶ手がかりは、問題のどこにあったのか。
すべてを聞く必要はありません。
一つだけ、
「この答えを選ぶ手がかりは、どこにあった?」
と確認します。
答えをもう一度教えるのではなく、問題文と知識がつながる場所へ戻します。
【知識は、問題の事実から呼び出せて初めて得点になる】
中学受験の理科では、覚えた知識をそのまま答える問題もあります。
しかし、多くの問題では、
実験の条件を読む。
比べる二つを選ぶ。
結果の違いを見る。
必要な知識を取り出す。
複数の情報を結びつける。
という作業が必要です。
知識は、持っているだけでは得点になりません。
問題の事実から呼び出し、答えの根拠として使えて、初めて点になります。
理科が伸びないとき、暗記量を増やす前に、
その知識は、どの現象で使うのか。
どの手がかりから思い出すのか。
を確認する必要があります。
【まとめ】
中学受験の理科で、覚えても点にならない子は、知識が足りないとは限りません。
一問一答では答えられても、現象から知識を選べない。
知識をばらばらの言葉として覚えている。
図や表で、比べる二つを見つけられない。
答えは覚えても、判断の手がかりが残っていない。
こうした理由で、覚えた内容を問題で使えないことがあります。
直すときは、
一問一答の役割を、知識の確認と理解する。
知識を、使う場面や実験と結びつける。
図表では、条件が一つだけ違う二つを比べる。
「条件の違い→結果の違い」を一本の矢印でつなぐ。
解き直しでは、答えではなく手がかりを残す。
一問一答を逆向きにも使う。
この流れが大切です。
理科の学習は、知識を増やすことだけではありません。
問題の事実から、必要な知識を取り出して使う練習です。
点につながるのは、覚えた言葉の数だけではありません。
目の前の現象と、持っている知識を結びつけられる力です。

