「早く勉強しなさい」
中学受験の家庭では、
一度は口にしたことがある言葉かもしれません。
リビングでゲームをしている。
ソファで寝転んでいる。
動画を見て笑っている。
その姿を見ると、
親の中に焦りが生まれます。
受験まで時間は限られている。
塾では毎週のようにテストがある。
周りの子も頑張っている。
だから、
「そんなことをしている場合じゃない」
と思ってしまう。
保護者面談でも、
「私がイライラするからいけないのでしょうか」
という相談を受けることがあります。
ただ私は、
親がイライラすること自体は、
悪いことではないと思っています。
それだけ真剣だからです。
それだけ子どものことを考えているからです。
問題は、
イライラすることではありません。
そのイライラが、
家庭の中でどんな役割を持ち始めるかです。
【勉強しないことが問題なのではない】
実は、
親は勉強しないこと自体に、
腹を立てているわけではないことがあります。
たとえば、
受験が終わった春休み。
旅行中。
日曜日の夜。
同じようにゲームをしていても、
そこまで気にならない。
でも受験学年になると、
急に気になる。
これは、
勉強そのものが問題なのではなく、
「このままで大丈夫だろうか」
という不安が強くなるからです。
間に合うだろうか。
志望校に届くだろうか。
塾についていけているのだろうか。
その不安が、
「早く勉強しなさい」
という言葉になって出てくるのです。
【親は安心したい】
保護者面談をしていると、
よく分かることがあります。
親が本当に欲しいのは、
勉強時間そのものではありません。
安心です。
今日もやるべきことをやった。
少しずつ前に進んでいる。
この子なりに頑張っている。
そう感じられれば、
親は少し落ち着きます。
逆に、
何を考えているのか分からない。
勉強しているように見えない。
危機感が感じられない。
そうなると不安になる。
だから声をかける。
確認する。
管理したくなる。
イライラの正体は、
怒りというより、
不安なのです。
【子どもは別の場所で止まっている】
一方で、
子どもは親とは違う景色を見ています。
学校がある。
塾がある。
宿題がある。
テストがある。
子どもなりに疲れています。
ただ、
それだけではありません。
勉強しない子の中には、
怠けているのではなく、
「どこから手をつければいいか分からない」
状態で止まっている子もいます。
宿題が多すぎる。
問題が難しすぎる。
間違い直しのやり方が分からない。
何から始めても終わらない気がする。
すると、
机に向かう前から心が折れてしまう。
親からは、
ただダラダラしているように見えます。
でも実際には、
始める前の段階で止まっていることがあります。
ここを見落とすと、
「なぜやらないの」
という言葉だけが増えていきます。
【イライラが子どもに伝わると】
親が不安になる。
子どもに声をかける。
子どもは嫌がる。
親はさらに不安になる。
また声をかける。
この繰り返しになることがあります。
すると、
勉強そのものが、
親子関係の火種になります。
本来、
受験は親子で戦うものではありません。
同じ方向を見るためのものです。
しかし、
イライラが続くと、
親は管理者になり、
子どもは管理される側になる。
ここから関係が苦しくなっていきます。
【伸びる家庭は何が違うのか】
伸びる家庭は、
イライラしない家庭ではありません。
不安がない家庭でもありません。
同じように心配しています。
同じように焦っています。
ただ、
不安をそのまま子どもにぶつけない。
そこが違います。
「勉強したの?」
ではなく、
「今日はどこまで進んだ?」
と聞く。
「大丈夫なの?」
ではなく、
「何か困っていることはある?」
と聞く。
ただし、
ここにも注意があります。
子どもの答えが、
親の想定より少なかった時です。
「ここまでしか進んでいない」
「まだ終わっていない」
そう聞いた瞬間に、
「え、それだけ?」
「そんなペースで間に合うの?」
と言ってしまうと、
対話はすぐに詰問へ変わります。
親は安心したくて聞いた。
でも、
子どもは責められたと感じる。
だから次から話さなくなる。
ここで大切なのは、
すぐに安心を回収しようとしないことです。
まず、
「そっか、そこまで進んだんだね」
と受け止める。
そのうえで、
「じゃあ次は何からやれそう?」
と聞く。
この順番が大切です。
【まとめ】
勉強しない子どもを見ると、
親はイライラします。
でも、
そのイライラの正体は、
多くの場合、怒りではありません。
将来への不安です。
そして親は、
勉強時間が欲しいのではなく、
安心したいのです。
だからこそ、
不安をそのままぶつけるのではなく、
一度受け止める必要があります。
子どもが勉強しない時、
本当に必要なのは、
叱ることではなく、
どこで止まっているのかを見つけることです。
中学受験は、
子どもを管理する期間ではありません。
少しずつ自分で考え、
自分で進む力を育てる期間です。
親の不安を、
子どもに処理させないこと。
そのうえで、
子どもが動き出せる場所を一緒に探すこと。
そこから、
家庭学習は少しずつ変わっていくのだと思います。
