保護者面談をしていると、
「共働きなので、十分に見てあげられなくて……」
という言葉をよく聞きます。
仕事から帰宅する頃には夜。
子どもは塾から戻り、
夕食や入浴を済ませている。
宿題の確認も十分にできない。
勉強を見てあげる時間も限られている。
中学受験の世界では、
親がどれだけ関われるか。
どれだけ管理できるか。
どれだけ勉強を見てあげられるか。
そんな話題が多いため、
「共働きは不利なのではないか」
と感じる方も少なくありません。
確かに、
そう見える場面はあります。
けれど長い間、教育現場に立っていると、
少し違う景色も見えてきます。
実際には、
よく伸びる子の家庭に、
共働きは決して少なくありません。
むしろ、
自分で考えて動ける子ほど、
共働き家庭で育っていることがあります。
なぜなのでしょうか。
【合宿で見える本当の姿】
その違いがよく見えるのは、
合宿や長時間講習です。
保護者がいない環境では、
普段の習慣がそのまま表れます。
次の授業の準備をする。
持ち物を確認する。
時間を見て移動する。
困ったら質問する。
そうした場面で、
自然に動ける子がいます。
誰かに言われる前に動く。
必要なことを自分で判断する。
忘れ物に気づけば自分で取りに行く。
その姿は、
勉強の場面でも同じです。
課題が終わったあと、
「次は何をやればいいですか」
と聞く子もいます。
一方で、
自分でテキストを開き、
次の課題に取り組む子もいます。
最初は小さな差です。
しかし受験学年になる頃には、
その差が大きく広がることがあります。
【見ていない時間が育てるもの】
共働き家庭には、
どうしても「見ていない時間」があります。
親が仕事をしている時間。
子どもが一人で過ごす時間。
その中で、
子どもは小さな判断を繰り返しています。
今日は何から始めるか。
どこまで進めるか。
分からない問題をどうするか。
親が横にいれば、
すぐに聞けるかもしれません。
でも、
いつも聞けるわけではない。
だから自分で考える。
もちろん失敗もあります。
宿題を後回しにして寝てしまう。
翌日の塾のテキストをカバンに入れ忘れる。
ゲームを優先して慌てる。
テスト勉強の計画が崩れる。
そうした失敗は、
決して珍しくありません。
けれど、
そのたびに子どもは考えます。
なぜ失敗したのか。
次はどうするのか。
どうすれば同じ失敗を防げるのか。
失敗しないことより、
失敗から立て直す経験。
実はその方が、
長い目で見ると大きな財産になります。
【親がいないから育つ力】
少し逆説的ですが、
親が常に近くにいないからこそ育つ力があります。
もし毎日、
「次はこれをやりなさい」
「宿題終わった?」
「この問題はこう解きなさい」
と指示が続けば、
子どもは判断する必要がありません。
考える必要もありません。
指示を待てばいいからです。
実際、
成績上位の子でも、
親がいないと何も進まない子はいます。
一方で、
飛び抜けた成績ではなくても、
自分で計画を立て、
自分で修正し、
自分で立て直せる子もいます。
その差は、
中学受験の後になって表れてきます。
【子どもは親の背中を見ている】
もう一つ、
見落とされがちなことがあります。
子どもは、
親の言葉以上に、
親の姿を見ています。
朝から仕事へ向かう姿。
時間をやりくりする姿。
疲れていても役割を果たす姿。
責任を持って働く姿。
そこから、
子どもは多くのことを学んでいます。
勉強しなさい。
頑張りなさい。
そう言われるより、
毎日頑張っている親の背中の方が、
強いメッセージになることがあります。
働くこと。
責任を持つこと。
限られた時間を大切にすること。
共働き家庭の子どもたちは、
そうした空気の中で育っています。
【試験会場に親は入れない】
もちろん、
受験学年の一時期だけを見ると、
親が細かく管理した方が結果が出ることもあります。
宿題の漏れは減ります。
勉強時間も増えるでしょう。
しかし、
受験本番が近づくほど、
最後に頼れるのは本人です。
どの問題から解くか。
分からない問題をどう処理するか。
緊張した時にどう立て直すか。
試験会場に、
親は入れません。
だからこそ、
自分で考え、
自分で動き、
自分で修正してきた経験が生きてきます。
自主自立は理想論ではありません。
受験そのものにも必要な力なのです。
【まとめ】
共働きかどうかは、
本質ではありません。
本当に大切なのは、
子どもが自分で動く余白を持てているかどうかです。
親がすべてを管理することと、
子どもに力がつくことは、
必ずしも同じではありません。
見ていない時間。
任せている時間。
少し距離のある時間。
その中で子どもは、
自分で考え、
自分で失敗し、
自分で立ち上がる経験を重ねています。
中学受験は、
親が頑張る期間でもあります。
しかし同時に、
子どもが自分の足で立ち始める期間でもあります。
共働きだから不利なのではありません。
見ていない時間の中で育つ力がある。
現場で多くの子どもたちを見てきて、
私はそう感じています。
