子どもの語彙力を伸ばすには?本を読むだけでは足りない理由と家庭でできること

子どもの国語力や作文力について考えるとき、よく出てくる言葉があります。

「語彙力」です。

保護者の方からも、

「語彙力を伸ばすには、どうしたらいいですか」

「やはり本をたくさん読ませた方がいいですか」

「語彙力用の教材をやらせた方がいいのでしょうか」

と聞かれることがあります。

たしかに、語彙力は国語の土台です。

言葉を知らなければ、文章を正確に読むことはできません。

自分の考えをうまく説明することも難しくなります。

作文や記述でも、使える言葉が少ないと、どうしても表現が単調になります。

ただし、語彙力を伸ばすというときに、注意したいことがあります。

語彙力は、ただ言葉をたくさん暗記すれば伸びるものではありません。

また、本を読めば自動的に作文で言葉が使えるようになるわけでもありません。

語彙には、大きく分けて二つの種類があります。

一つは、見たり聞いたりすれば意味が分かる「知っている言葉」。

もう一つは、自分で話したり書いたりするときに使える「使える言葉」です。

この二つを分けて考えることが、語彙力を伸ばすうえでとても大切です。

【語彙には「知っている言葉」と「使える言葉」がある】

語彙力というと、たくさんの言葉を知っていることだと思われがちです。

もちろん、知っている言葉が多いことは大切です。

文章を読むとき、知らない言葉が多ければ、内容を正確に理解することは難しくなります。

説明文、物語文、新聞、ニュース、入試問題。

どれを読む場合でも、言葉の意味が分かることは読解の入り口になります。

しかし、知っているだけでは十分ではありません。

たとえば、子どもが「慎重」「協力」「工夫」「責任」「成長」という言葉を知っていたとします。

読めば、なんとなく意味は分かる。

聞けば、だいたい理解できる。

でも、自分で作文を書くときに使えるかというと、別の問題です。

「ぼくは慎重に考えました」

「友だちと協力しました」

「工夫しました」

と書けたとしても、その言葉を自分の体験と結びつけて使えていなければ、文章は浅くなります。

本当に使える言葉とは、意味を知っているだけの言葉ではありません。

自分の経験や考えを説明するときに、自然に使える言葉です。

つまり、語彙力には二段階あります。

知っている言葉を増やす段階。

知っている言葉を、使える言葉に変える段階。

この二つを分けて考えないと、語彙力の育て方を間違えてしまいます。

【本やアニメ、ニュースは「知っている言葉」を増やす入口になる】

語彙を増やすために、本を読むことはとても大切です。

読書を通して、子どもは日常会話ではあまり使わない言葉に出会います。

物語の中で、気持ちを表す言葉に触れる。

説明文の中で、社会や自然に関する言葉に触れる。

登場人物の行動を通して、性格や関係を表す言葉に触れる。

こうした経験は、語彙を増やすうえで大きな意味があります。

ただし、語彙の入口は本だけではありません。

アニメ、マンガ、ニュース、家族の会話、学校での出来事。

子どもは、さまざまな場面で新しい言葉に出会っています。

たとえば、アニメやマンガの決め台詞が流行ることがあります。

子どもが急に、少し難しい言い回しをまねすることもあります。

大人から見ると、ただの流行に見えるかもしれません。

しかし、これは子どもが新しい言葉や表現に反応している証拠でもあります。

かっこいい言葉。

おもしろい言い方。

強く印象に残る表現。

そうしたものに、子どもは敏感です。

言葉は、まず「おもしろい」「かっこいい」「使ってみたい」という感覚から入ることがあります。

その意味では、読書だけでなく、アニメやマンガ、ニュースなども、知っている言葉を増やす入口になります。

大切なのは、子どもが新しい言葉に触れる機会を、生活の中で増やしていくことです。

【ただし、知っているだけでは作文で使えない】

本を読む。

アニメを見る。

ニュースを聞く。

会話の中で新しい言葉に触れる。

こうした経験によって、子どもの中には「知っている言葉」が増えていきます。

ただし、それだけで作文や記述に使えるとは限りません。

ここが、語彙力でよく誤解されるところです。

読めば意味が分かる言葉と、自分で使える言葉は違います。

たとえば、「悔しい」という言葉を知っていても、自分の経験を説明するときに使えるとは限りません。

「試合に負けて悔しかった」

までは書けるかもしれません。

でも、

「なぜ悔しかったのか」

「何ができなかったから悔しかったのか」

「次はどうしたいと思ったのか」

まで言葉にできなければ、文章は深まりません。

「工夫」という言葉も同じです。

言葉として知っていても、

どんな場面で工夫したのか。

何を変えたのか。

その結果どうなったのか。

なぜそれを工夫と言えるのか。

ここまで説明できて、初めて使える言葉になります。

語彙は、知っているだけではまだ材料の段階です。

話したり書いたりする中で使うことで、少しずつ自分の言葉になっていきます。

【話せない言葉は、書くことも難しい】

作文が苦手な子を見ていると、書く前の段階で言葉が止まっていることがあります。

「どうだった?」

と聞くと、

「楽しかった」

で終わる。

「何が楽しかったの?」

と聞くと、

「全部」

で止まる。

「どうしてそう思ったの?」

と聞くと、

「なんとなく」

になる。

この状態で、いきなり作文を書こうとしても、なかなか文章にはなりません。

話すことができない言葉は、書くことも難しいからです。

作文は、頭の中にある考えや気持ちを文字にする作業です。

しかし、その前に、自分の中にある出来事や気持ちを言葉にする経験が必要です。

たとえば、

「楽しかった」

だけで終わらせず、

「友だちと作戦を考えたのが楽しかった」

「最初は失敗したけれど、やり方を変えたらうまくいってうれしかった」

「前よりも早くできるようになって、自信がついた」

と話せるようになると、その言葉は作文でも使いやすくなります。

語彙力を伸ばすうえで、会話はとても大切です。

会話は、知っている言葉を使える言葉に変える練習だからです。

【家庭の会話が、語彙を使える言葉に変える】

語彙力を伸ばすために、必ずしも特別な教材や専門の授業が必要なわけではありません。

もちろん、語彙を整理する教材が役立つ場面もあります。

入試に向けて、ことわざ、慣用句、抽象語、対義語、類義語などを学ぶことも必要になるでしょう。

ただ、小学生の語彙力の土台は、日常生活の中でも十分に育てることができます。

特に大切なのは、家族との会話です。

子どもが何かを話したときに、少しだけ言葉を広げる。

これだけでも、語彙の使い方は変わっていきます。

たとえば、子どもが、

「楽しかった」

と言ったら、

「何が一番楽しかった?」

「どんなところがおもしろかった?」

「前と比べて何が違った?」

と聞いてみる。

子どもが、

「むずかしかった」

と言ったら、

「どこがむずかしかった?」

「知らないことがあったの?」

「やり方は分かっていたけれど、時間がかかったの?」

と聞いてみる。

子どもが、

「すごかった」

と言ったら、

「何がすごいと思った?」

「大きさ?速さ?考え方?」

「自分だったらできそう?」

と聞いてみる。

こうした会話の中で、子どもは言葉を少しずつ具体化していきます。

「楽しい」だけではなく、「協力するのが楽しい」「工夫するのがおもしろい」「できるようになってうれしい」と言えるようになる。

「むずかしい」だけではなく、「覚えるのが難しい」「考え方が難しい」「時間内に解くのが難しい」と分けられるようになる。

この積み重ねが、使える言葉を増やしていきます。

【語彙力は、生活の中で育つ】

語彙力を伸ばすというと、机に向かって言葉を覚えることを想像するかもしれません。

もちろん、言葉を学ぶ時間も大切です。

しかし、語彙は生活の中でも育ちます。

ニュースを見ながら、

「これはどういう意味だろう」

と話す。

本を読んだあとに、

「どの場面が印象に残った?」

と聞く。

アニメやマンガの言葉について、

「その言い方、どういう意味?」

と話す。

学校での出来事について、

「それは悔しかったの?恥ずかしかったの?それとも困ったの?」

と気持ちの言葉を分ける。

料理をしながら、

「混ぜる」「刻む」「炒める」「煮込む」

と動作の言葉に触れる。

外を歩きながら、

「蒸し暑い」「肌寒い」「まぶしい」「にぎやか」

と感覚を言葉にする。

こうした小さな言葉のやりとりが、子どもの語彙を広げていきます。

語彙力は、特別な時間だけで育つものではありません。

生活の中で、言葉に出会い、意味を感じ、実際に使ってみることで育ちます。

【専用教材は必要ないのか】

では、語彙力を伸ばすために、専用の教材は必要ないのでしょうか。

結論から言えば、必ずしも最初から必要ではありません。

特に小3・小4くらいまでであれば、まずは生活の中で言葉に触れ、会話の中で使う経験を増やすことが大切です。

本を読む。

アニメやマンガの言葉に反応する。

ニュースを見て話す。

家族で出来事を言葉にする。

こうした経験が土台になります。

ただし、学年が上がるにつれて、教材が役立つ場面もあります。

ことわざや慣用句。

抽象的な言葉。

説明文でよく出る言葉。

入試問題に出やすい語句。

こうしたものは、生活の中だけでは出会いにくいことがあります。

その場合は、教材を使って整理することにも意味があります。

ただし、教材で覚えた言葉も、使わなければ定着しません。

覚えた言葉を、会話や作文の中で使ってみる。

例文を自分の体験に置き換えてみる。

ニュースや本の中で見つけてみる。

このような使い方をして、初めて「知っている言葉」が「使える言葉」に近づきます。

教材は、語彙力を伸ばすための道具です。

それだけで完結するものではありません。

【まとめ】

語彙力を伸ばすには、ただ言葉をたくさん覚えればよいわけではありません。

語彙には二つの段階があります。

一つは、見たり聞いたりすれば意味が分かる「知っている言葉」。

もう一つは、自分で話したり書いたりするときに使える「使える言葉」です。

読書、アニメ、マンガ、ニュース、家族の会話。

こうしたものは、「知っている言葉」を増やす入口になります。

子どもは、新しい言葉に敏感です。

かっこいい言葉、おもしろい表現、印象に残る言い方に自然と反応します。

その興味を、語彙を増やす入口にしていくことができます。

ただし、知っているだけでは、作文や記述で使えるとは限りません。

言葉は、使うことで意味が深まります。

話す中で使う。

書く中で使う。

自分の体験と結びつけて使う。

そうして初めて、言葉は自分のものになっていきます。

語彙力を伸ばすために、最初から特別な教材や専門の授業が必要なわけではありません。

まずは、生活の中でいろいろな言葉に触れること。

そして、家族との会話の中で、その言葉を使ってみること。

インプットとアウトプットのバランスを意識することが、子どもの語彙力を育てる第一歩です。