適性検査の記述問題を見ていると、
「ちゃんと書いているのに点が取れない」
という子がいます。
文章としては成立している。
字数も埋まっている。
聞かれたことについて、自分なりの答えも書いている。
それでも得点につながらない。
こういうとき、私はすぐに作文の書き方を直そうとはしません。
なぜなら、適性検査の記述で点が取れない原因は、文章力よりも、その前の「考える過程」にあることが多いからです。
前回の記事では、適性検査では「知識を持っていること」だけではなく、「その知識を使って考えること」が大切だと書きました。
記述問題は、まさにそれが答案として表れるところです。
適性検査の記述は「自由に書く問題」ではない
まず知っておきたいのは、適性検査の記述問題は、思ったことを自由に書けばよい作文とは違うということです。
問題文がある。
資料がある。
条件がある。
そして、
「資料から分かることを書きなさい」
「その理由を説明しなさい」
「あなたならどのように考えますか」
などと問われます。
つまり、答えを作るための材料は、問題の中に置かれています。
適性検査では、小学校で身につけた知識や技能を活用し、思考・判断・表現する力を見ることが基本的な考え方になっています。東京都も、適性検査について「自分自身で問題を発見し、筋道を立てて考え、よりよく解決しようとする態度や能力など」を見る検査と説明しています。東京都教育委員会
だから、
「何を書こうかな」から始めるのではなく、「何を使って答える問題なのか」を考える。
ここが記述問題のスタートです。
いきなり答えを書かない
記述が苦手な子によくあるのが、問題を読んだ瞬間に解答欄へ書き始めることです。
これはあまりおすすめしません。
まず、
①何を聞かれているのか
②どの資料を使うのか
③そこから何が分かるのか
④だから、どう答えるのか
この順番で考えます。
たとえば、二つのグラフを比較して理由を説明する問題なら、最初に文章を考える必要はありません。
まずグラフを見る。
増えているのか。
減っているのか。
差があるのか。
同じように変化しているのか。
数字や変化をつかんでから、
「この違いがある。だから、こう考えられる」
と答えを作ります。
文章は最後です。
ここを逆にしてはいけません。
「自分の考え」だけを書いても点にならないことがある
適性検査で特に注意したいのが、
「あなたの考えを書きなさい」
という問題です。
これを見ると、
「自分の意見なら何を書いてもいい」
と思う子がいます。
しかし、問題には多くの場合、その前に文章や資料、会話文、条件などが示されています。
そこを無視して、
「私は〇〇だと思います。なぜなら大切だからです」
と書いても、十分な答えにならないことがあります。
大切なのは、
問題の材料を使って、自分の考えを作ること。
です。
資料にこう書かれている。
自分にはこんな経験がある。
だから私はこう考える。
こうやって根拠と考えをつなげます。
「自分の考えを書く」と「好きなことを書く」は違います。
点が取れない子は「根拠」が抜けていることが多い
記述答案を見ていて、私が特に確認するのは、
「なぜ、その答えになったの?」
という部分です。
たとえば、
「地域の人と協力することが大切です」
と書いてあったとします。
それ自体は間違っていない。
しかし、
「なぜ?」
がありません。
そこで、
「資料のどこを見てそう思った?」
と聞いてみます。
すると、
「ここに地域の人が参加したら活動が増えたと書いてある」
と答えられることがあります。
それなら、その根拠を答案に入れればいい。
子どもは考えていないのではありません。
頭の中ではつながっているのに、その途中を答案に書いていないことがあるのです。
記述では、その「途中」を読み手に見せる必要があります。
「資料 → 根拠 → 答え」で考える
記述が苦手な子には、複雑な作文技術を最初から教える必要はないと思っています。
まず、
資料 → 根拠 → 答え
この流れを意識するだけでも変わります。
資料のどこを見るのか。
そこから何が分かるのか。
それを使って何と答えるのか。
たとえば、
「Aでは〇〇が増えている」
という資料がある。
そこから、
「〇〇によって利用する人が増えたと考えられる」
と読み取る。
そして、
「したがって、私は〇〇という方法が有効だと考える」
と答える。
もちろん、実際の問題はもっと複雑です。
しかし、基本は同じです。
答えだけを作ろうとせず、答えにたどり着く道筋を作る。
これが記述問題では大切です。
問題文の「条件」を落とさない
もう一つ、記述で点を落としやすいのが条件の見落としです。
「二つの資料を使って」
「理由を含めて」
「あなたの経験を踏まえて」
「〇字以内で」
など、問題にはさまざまな条件があります。
内容そのものは悪くないのに、一つの条件を満たしていない。
これでは得点につながりにくくなります。
だから、記述問題では書き終わった後に、
「聞かれたことに全部答えたか」
を確認する習慣をつけてほしいと思います。
文章をきれいに直すより先です。
誤字脱字を探すより先です。
まず条件です。
「書けない」のではなく「考えが整理されていない」
記述問題で手が止まると、
「うちの子は文章を書くのが苦手で……」
と考えてしまうことがあります。
しかし、実際に子どもと話してみると、
「何を書けばいいか分からない」
のではなく、
「何をどう考えればいいか分からない」
ことがあります。
これは大きな違いです。
文章の型を覚えさせるだけでは解決しません。
資料を見る。
必要な情報を選ぶ。
比べる。
関係を考える。
根拠を見つける。
そこから答えを決める。
最後に文章にする。
適性検査の記述対策では、この順番を意識したいところです。
記述があるかどうかは、学校・地域によって違う
ここは、前回の記事のファクトチェックを踏まえて明確にしておきます。
適性検査といっても、全国すべてが同じ形式ではありません。
全国の公立中高一貫校では、資料を読み取って考えたり、文章で表現したりする問題が広く見られます。東京都の都立中高一貫校でも、2026年度の一般枠では適性検査Ⅰ・Ⅱ・Ⅲなどを組み合わせて実施しています。愛知県公式サイト
一方、愛知県立附属中学校の適性検査は、2026年度時点では全問選択式のマークシート方式です。 愛知県の公式Q&Aにも明記されています。愛知県公式サイト
ですから、
「適性検査=必ず長文記述が出る」
という理解は正確ではありません。
志望校の最新の募集要項や過去問題を確認して、その学校で実際に求められる力を見極めることが必要です。
ただ、記述問題の有無にかかわらず、
資料から必要な情報を選ぶ。
条件を整理する。
根拠をもとに考える。
という力そのものは、適性検査を考えるうえで重要です。
親が「正しい文章」を作ってしまわない
家庭で記述問題を見ると、どうしても親は直したくなります。
「こう書いたほうが分かりやすい」
「この言葉を使ったほうがいい」
「答えはこうでしょう」
確かに、親が直せば答案はきれいになります。
しかし、それでは子どもが答えを作る練習になりません。
親が見るなら、
「どこを見てそう考えたの?」
「何を聞かれている?」
「この条件は入っている?」
くらいで十分です。
答えを教えるのではなく、子ども自身に考えた道筋をたどらせる。
そして、自分で気づいて、自分で直す。
その経験を積ませたいと思います。
親は理解する。子どもは自分でやる。
記述問題でも同じです。
まとめ
適性検査の記述問題で点が取れないと、
「作文力をつけなければ」
と考えがちです。
しかし、まず確認したいのは文章の上手さではありません。
何を聞かれているのか。
どの資料を使うのか。
何を根拠にするのか。
そこからどう考えたのか。
この道筋です。
記述とは、頭の中にある答えをきれいな文章にするだけの問題ではありません。
考えた道筋を、相手に伝わる形にする問題です。
だから、書く練習だけを繰り返すのではなく、
「どうして、その答えになったの?」
を自分で説明できるようにする。
そこから始めてほしいと思います。
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