作文を読んでいると、出来事は詳しく書けているのに、最後のまとめが弱い子がいます。
反対に、
「協力することが大切だと思いました」
「努力を続けることが必要です」
と、立派な言葉は書けていても、なぜそう思ったのかが伝わらない子もいます。
特に、公立中高一貫校の適性検査作文では、自分の体験を書くことに加えて、そこから考えたことをまとめる力が求められます。
そこで意識したいのが、「具体」と「抽象」の使い分けです。
難しく見える言葉ですが、小学生の作文では、それぞれの役割を分けて考えると分かりやすくなります。
【作文における「具体」と「抽象」とは】
具体とは、読み手が場面を思い浮かべられる内容です。
たとえば、
「野球の試合で声をかけ合った」
「係活動で、欠席した友達の仕事を代わった」
「算数の問題を、友達と考え方を比べながら解いた」
といった、自分が実際に経験した出来事です。
誰が、どこで、何をしたのか。
そのとき、どのようなことが起きたのか。
こうした情報が入るほど、文章は具体的になります。
一方、抽象とは、一つの出来事から離れて、別の場面にも当てはまる考えとしてまとめることです。
「協力することの大切さ」
「相手の立場を考える必要性」
「失敗しても挑戦を続けること」
といった表現が、抽象的な考えにあたります。
具体は、実際に起きた場面。
抽象は、その場面から得た考え。
まずは、この違いを押さえることが大切です。
【適性検査作文では三段落構成が使いやすい】
適性検査作文では、四百字から六百字程度の字数で書く問題が多くあります。
限られた時間と字数の中で、体験と意見の両方を書くには、三段落構成が使いやすくなります。
第一段落では、問いに対する自分の立場を短く示します。
第二段落では、その立場を支える自分の体験や具体例を書きます。
第三段落では、その体験を通して分かったことを、第一段落より一段深くまとめます。
ここで大切なのは、第一段落と第三段落を同じ内容にしないことです。
たとえば、「協力することについて書きなさい」という課題なら、次のように分けます。
第一段落。
私は、目標を達成するためには、周囲との協力が必要だと考えます。
第二段落。
学校行事の準備で、自分の仕事が終わったあと、作業が遅れている班を手伝った経験を書く。
第三段落。
協力とは、自分の役割を果たすだけではなく、全体の様子を見て、必要な行動を選ぶことだと分かりました。
第一段落は、問いへの答えです。
第三段落は、体験を通して得た考えです。
この役割を分けることで、同じ結論を繰り返す作文になりにくくなります。
【第二段落は、読み手が場面を想像できるように書く】
第二段落の役割は、自分の体験を読み手に伝えることです。
ここで、
「私は協力した経験があります」
だけでは、何があったのか分かりません。
どの場面だったのか。
誰と何をしていたのか。
どのような問題が起きたのか。
自分はどう動いたのか。
その結果、何が変わったのか。
こうした情報を入れることで、読み手は場面を共有できます。
たとえば、
「運動会の練習で協力しました」
よりも、
「運動会の応援練習で声がそろわず困っていたとき、前列と後列に分かれて練習する方法を提案しました」
と書いた方が、行動がはっきり伝わります。
具体的に書くとは、難しい言葉を使うことではありません。
読み手が、同じ場面を頭の中に思い浮かべられるように書くことです。
【第三段落は、第二段落の短い言い換えではない】
第二段落で体験を書いたあと、第三段落でも同じ出来事を繰り返してしまう子がいます。
第二段落。
「野球の試合で、仲間と声をかけ合いました」
第三段落。
「これからも、野球の試合で声をかけ合いたいです」
これでは、第二段落の内容を短く言い直しているだけです。
第三段落では、体験をもう一度説明するのではなく、その体験から何が分かったのかを書きます。
たとえば、
「一人では難しいことでも、お互いに声をかけ合えば、力を発揮しやすくなると分かりました」
とまとめます。
さらに一段深めるなら、
「協力とは、同じ行動をすることではなく、周囲の状況を見ながら、自分にできることを考えることだと思います」
と書くこともできます。
第三段落は、体験の続きを書く場所ではありません。
体験から得た意味を、課題への答えとして示す場所です。
【「野球」を「スポーツ」に言い換えるだけでは抽象化にならない】
具体と抽象の違いを説明するとき、
野球は具体。
スポーツは抽象。
と教えることがあります。
確かに、言葉の範囲は広がっています。
ただ、作文では、単に狭い言葉を広い言葉へ置き換えるだけでは十分ではありません。
「野球の試合で声をかけた」
を、
「スポーツでは声をかけることが大切だ」
と変えても、競技名を言い換えただけです。
抽象化とは、言葉を広くすることではありません。
一つの体験から、別の場面にも通じる考えを取り出すことです。
たとえば、
「野球の試合で、仲間の様子を見ながら声をかけた」
という体験から、
「集団で一つの目標に向かうときは、自分の役割だけでなく、周囲の状況を見て行動することが必要だ」
と考える。
この考えは、野球だけでなく、学校行事、係活動、委員会、将来の仕事にも通じます。
一つの経験を、別の場面でも使える考えに変える。
これが、作文における抽象化です。
【第三段落では、具体的な言葉が残りすぎていないか確認する】
第三段落に、第二段落で使った固有の言葉が多く残っていると、体験の説明から抜け出せていないことがあります。
野球。
投手。
守備。
試合。
チームメート。
こうした言葉が第三段落にも多く並んでいたら、まだ具体例の続きを書いている可能性があります。
ただし、具体的な言葉を機械的に消せばよいわけではありません。
大切なのは、
「この体験から、別の場面にも通じる何が分かったのか」
を考えることです。
たとえば、
仲間。
協力。
役割。
相手。
目標。
行動。
といった言葉を使いながら、体験から得た考えをまとめます。
ただし、
「協力が大切です」
だけでは、誰にでも書ける一般論になります。
何をしたから、何が分かったのか。
その考えは、別のどのような場面にも通じるのか。
そこまで考えることで、自分の体験に基づいたまとめになります。
【第一段落と第三段落が同じ内容になっていないか】
書き終えたあとに、第一段落と第三段落を比べてみてください。
第一段落。
「協力することが大切だと思います」
第三段落。
「これからも協力することを大切にしたいです」
この二つは、ほぼ同じ内容です。
第一段落は、問いに対する自分の立場を示す場所です。
第三段落は、体験を通して、その立場がどのように深まったのかを書く場所です。
第一段落では、
「私は、目標を達成するためには協力が必要だと考えます」
と方向を示します。
第三段落では、
「協力とは、ただ一緒に行動することではなく、周囲の状況を見て、自分にできることを考えることだと分かりました」
と、体験から得た一段深い考えを書きます。
この違いが出ていれば、三段落構成が形だけで終わらず、筋の通った作文になります。
【具体と抽象は、どちらか一方だけでは伝わらない】
具体的な体験だけを書けば、出来事の報告で終わります。
抽象的な意見だけを書けば、誰にでも書ける一般論になります。
適性検査作文で必要なのは、その両方です。
第二段落では、自分にしか書けない具体的な体験を書く。
第三段落では、その体験から得た考えを、別の場面にも通じる言葉でまとめる。
具体があるから、意見に説得力が生まれます。
抽象があるから、体験が課題への答えになります。
一つの体験から、広く通じる考えを見つける。
この行き来が、筋の通った作文につながります。
【まとめ】
小学生の作文における「具体」と「抽象」は、難しい表現の使い分けではありません。
具体は、読み手が場面を想像できる体験や行動です。
抽象は、その体験から得た考えを、別の場面にも通じる形でまとめることです。
適性検査作文では、
第一段落で、問いに対する立場を示す。
第二段落で、具体的な体験を書く。
第三段落で、体験から得た一段深い考えをまとめる。
この三段落構成が使いやすくなります。
書き終えたら、
第一段落と第三段落が同じ内容になっていないか。
第三段落が、第二段落の短い言い換えになっていないか。
一つの体験から、別の場面にも通じる考えを取り出せているか。
この三点を確認してみてください。
具体的な体験と、そこから生まれた考えがつながったとき、作文は単なる出来事の説明ではなく、その子自身の意見として伝わるようになります。
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