中学受験の国語で、保護者が悩みやすいのが記述問題です。
本文の内容は分かっているように見える。
選択問題はある程度できる。
口頭で聞けば、それらしいことも言える。
それなのに、記述欄になると手が止まる。
書いても短すぎる。
本文の言葉をつなげただけになる。
文章としては整っているのに、点数がつかない。
このような子は少なくありません。
すると保護者は、
「文章を書く力がないのではないか」
「語彙力が足りないのではないか」
「もっと作文を書かせた方がよいのではないか」
と考えます。
もちろん、書く力や語彙力も無関係ではありません。
しかし、中学受験の国語記述でつまずく原因は、単純な文章力不足とは限りません。
問いが何を求めているか分かっていない。
答えの着地点が決まっていない。
本文のどこを根拠にすればよいか分からない。
必要な情報を選べない。
頭の中にある考えを、答案の形へ変換できない。
こうした複数の問題が重なっていることがあります。
この記事では、中学受験の国語記述が苦手な子に見られやすい特徴と、家庭でできる直し方を整理します。
【国語記述は、自由に文章を書く問題ではない】
国語の記述問題は、作文ではありません。
自分の考えを自由に表現する問題ではなく、本文をもとに、問われたことへ必要な形で答える問題です。
必要なのは、
問いを読む。
答えの着地点を決める。
本文から根拠を探す。
必要な要素を選ぶ。
字数内に配置する。
最後に日本語として整える。
という一連の処理です。
このどこかでずれると、答案は合いにくくなります。
たとえば、本文の内容を理解していても、問いが「なぜですか」と聞いているのに、出来事だけを書いていれば点にはなりません。
本文の言葉を多く使っていても、必要な理由や心情が抜けていれば、十分な得点にはつながりません。
国語記述が苦手な子を見るときは、文章が上手か下手かだけで判断しないことが大切です。
どの処理で止まっているのかを分けて見る必要があります。
【特徴1:問いが何を求めているか分かっていない】
記述が苦手な子の中には、本文ではなく、問いの読み取りでつまずいている子がいます。
たとえば、
「なぜですか」
「どのような気持ちですか」
「どういうことですか」
「どのように変化しましたか」
では、求められている答えの形が違います。
「なぜですか」なら、理由を書く必要があります。
「どのような気持ちですか」なら、心情を表す言葉で終える必要があります。
「どういうことですか」なら、本文中の表現を分かりやすく言い換えます。
「どのように変化しましたか」なら、変化の前と後が必要です。
問いを十分に読まず、近くにある本文の言葉を抜き出しただけでは、答えになりません。
家庭で直すときは、いきなり答案を書かせるのではなく、
「この問題は何を聞いている?」
「理由を答える問題?」
「気持ちを答える問題?」
「前と後の変化を書く問題?」
と確認します。
問いは、答えの内容だけでなく、答えの形まで指定しています。
【心情記述は、最後の言葉を先に決める】
心情を答える記述問題では、最初に文末を決めると、答案がぶれにくくなります。
たとえば、
「どのような気持ちですか」
と聞かれたなら、答えの最後は、
「悲しい気持ち」
「悔しい気持ち」
「申し訳ない気持ち」
「安心した気持ち」
「期待に応えたい気持ち」
など、心情を表す言葉で終わる必要があります。
記述が苦手な子は、出来事から書き始め、その説明だけで終わることがあります。
たとえば、
「友だちが自分を置いて先に行ってしまったから」
と書いて終わる。
これでは、気持ちが生まれた理由は書かれていますが、肝心の心情がありません。
そこで、最初に文末を決めます。
「悲しい気持ち」
と決めたうえで、
「なぜ悲しいのか」
を前に置きます。
すると、
「友だちに置いていかれ、自分だけ必要とされていないと感じたため、悲しい気持ち」
という形になります。
心情記述では、
何が起きたのか。
その出来事をどう受け取ったのか。
最後にどのような気持ちになったのか。
この順番で組み立てると、答えがまとまりやすくなります。
文末が決まると、その心情を支えるために、本文のどこを使えばよいかも探しやすくなります。
【特徴2:本文のどこを使えばよいか分からない】
問いの意味は分かっていても、本文のどこを根拠にすればよいか分からない子もいます。
記述問題の材料は、多くの場合、本文の中にあります。
しかし、本文全体から探そうとすると、子どもは迷います。
似た表現が何か所もある。
人物の気持ちが直接書かれていない。
説明文では、具体例と結論のどちらを使えばよいか分からない。
その結果、本文を何度も読み返し、時間だけが過ぎてしまいます。
家庭では、
「この問いは、どの場面について聞いている?」
「気持ちが変わった前後はどこ?」
「この言葉の理由になりそうな部分はどこ?」
と、探す範囲を狭めます。
親が正解箇所をすぐに教えるのではなく、子ども自身に候補を探させることが大切です。
国語記述で必要なのは、文章を作る力だけではありません。
本文から、使うべき根拠を見つける力です。
【特徴3:見つけた言葉を全部入れようとする】
本文から根拠を見つけても、それをすべて答案に入れようとする子がいます。
その結果、
文が長くなる。
同じ内容を繰り返す。
必要のない説明まで入る。
主語と述語がつながらなくなる。
ということが起きます。
本文から根拠を探すことは大切ですが、見つけた情報を全部使う必要はありません。
問いに必要な材料だけを選ぶ必要があります。
たとえば、理由を二つ書く問題なら、
理由1。
理由2。
結論。
という形に整理します。
心情を答える問題なら、
出来事。
受け取り方。
気持ち。
という形にします。
家庭では、
「この答えに絶対必要な言葉はどれ?」
「なくても意味が通る部分はどこ?」
と聞くと、情報を選ぶ練習になります。
記述問題は、本文を写す問題ではありません。
必要な情報を選び直す問題です。
【特徴4:きれいな一文を、いきなり完成させようとする】
記述が苦手な子は、材料を整理する前に、いきなり解答欄へ書き始めることがあります。
すると、
途中で何を書いているのか分からなくなる。
書き出しと結論がずれる。
必要な要素が抜ける。
一文が長くなりすぎる。
ということが起きます。
特に、40字、60字、80字と字数が増えるほど、最初から完成した文章を作るのは難しくなります。
ここで、保護者も子どもも誤解しやすいことがあります。
記述問題は、文章の美しさを競う問題ではありません。
多くの記述問題では、問いに対応した根拠、理由、心情、変化など、得点につながる要素が答案に入っているかどうかが重要になります。
ところが、真面目な子ほど、解答欄を一つのきれいな文章で埋めようとします。
日本語を滑らかにつなぐ。
語尾を整える。
同じ表現を避ける。
読みやすい言葉に言い換える。
その結果、肝心の根拠や理由を、文字数の都合で削ってしまうことがあります。
文章としては整っている。
けれど、得点につながる要素が足りない。
これが、真面目に書いているのに部分点を取り切れない子に起きやすい問題です。
国語の記述では、最初からきれいな一文を作る必要はありません。
まず、解答欄という限られた箱の中に入れるべき部品を決めます。
たとえば心情問題なら、
- 何が起きたのか
- その出来事をどう受け取ったのか
- 最後にどのような気持ちになったのか
という部品です。
理由説明なら、
- どのような状態なのか
- その原因は何か
- 本文中のどの根拠を使うのか
をそろえます。
先に必要な部品を出す。
字数に合わせて、不要な部分を削る。
最後に、部品同士を日本語としてつなぐ。
この順番で構いません。
記述問題は、最初から作文を完成させる作業ではありません。
限られた字数の中に、得点につながる要素を過不足なく配置する作業です。
日本語の美しさを整えるのは、必要な要素がそろった後です。
【特徴5:口では言えるのに、書くと止まる】
保護者がよく感じるのが、
「口で聞けば言えるのに、書けない」
という状態です。
これは、考えがないわけではありません。
頭の中の考えを、答案の形へ変換する途中で止まっています。
会話では、
「置いていかれて悲しかった」
「自分だけ認めてもらえないと思った」
「失敗したけれど、最後に褒めてもらえて安心した」
など、断片的に話すことができます。
しかし、答案では、主語、理由、前後関係を整える必要があります。
家庭では、子どもが口で答えたら、親がすぐ完成文に直さないことです。
まず、
「最後はどんな気持ちで終わる?」
「その気持ちになった理由は何?」
「本文のどこからそう分かる?」
と聞きます。
口頭で出た材料を、子ども自身に短く書かせます。
話せることと書けることの間には、変換の練習が必要です。
【特徴6:模範解答を写して終わる】
記述の直しでよくあるのが、模範解答を赤で写して終わることです。
ノートはきれいになります。
直した形にもなります。
しかし、自分の答案のどこがずれていたのかは分かりません。
問いに答えていなかったのか。
根拠が足りなかったのか。
必要な要素が抜けていたのか。
余計な情報が多かったのか。
言葉のつなぎ方に問題があったのか。
ここを見ないまま模範解答を写しても、次の問題にはつながりにくくなります。
直しで確認するのは、次の三つです。
自分の答案に入っていた要素。
足りなかった要素。
余計だった要素。
模範解答は、覚えるための文章ではありません。
自分の答案との差を見つけるための材料です。
【家庭でできる直し方1:問いと条件に印をつける】
記述問題の直しでは、最初に問いを確認します。
「なぜ」
「どのような気持ち」
「どういうこと」
「どのように変化」
など、答えの形を決める言葉に印をつけます。
さらに、
「本文中の言葉を使って」
「二つの理由を」
「〇字以内で」
といった条件にも印をつけます。
問いは、答案の設計図です。
何を聞かれ、どのような形で答えるのかが分からないまま本文を探しても、答案はまとまりません。
【家庭でできる直し方2:答えの着地点を決める】
次に、答えの最後を決めます。
心情なら、
「悲しい気持ち」
「安心した気持ち」
「申し訳ない気持ち」
などです。
理由なら、
「〜から」
「〜ため」
で終える形を考えます。
変化なら、
「最初は〜だったが、最後には〜になった」
という骨組みを作ります。
答えの着地点が決まると、本文から何を探せばよいかが明確になります。
答案がぶれる子ほど、最初に最後を決めることが大切です。
【家庭でできる直し方3:本文の根拠に線を引く】
答えの着地点を決めたら、それを支える根拠を本文から探します。
「その気持ちになった出来事はどこ?」
「理由が分かる一文はどこ?」
「変化の前と後はどこ?」
と確認します。
答えを書く前に、使う部分へ線を引きます。
根拠が一つでは足りない場合は、複数の場所に印をつけます。
本文のどこを使うかが決まれば、答案に必要な材料も見えやすくなります。
【家庭でできる直し方4:必要な部品を書き出す】
根拠を見つけたら、答案に必要な要素を短く書き出します。
たとえば、
- 約束を破ってしまった
- 相手を傷つけたと気づいた
- 申し訳ない気持ち
というように分けます。
この段階では、きれいな文章にする必要はありません。
必要な部品がそろっているかを見ることが目的です。
部品がそろったら、問いに合う順番に並べます。
その後で、一文につなげます。
【家庭でできる直し方5:字数に合わせて削る】
必要な要素をそろえたら、字数に合わせて整理します。
ここで削るのは、得点に必要な根拠ではありません。
同じ意味の繰り返し。
なくても意味が通る修飾語。
本文の説明をそのまま長く写した部分。
問いに直接関係しない情報。
こうした部分です。
先に字数を気にしすぎると、必要な要素まで削ってしまいます。
まず部品をそろえる。
その後で、余分な言葉を削る。
この順番が大切です。
【家庭でできる直し方6:自分の答案との差を見る】
最後に、自分の答案と模範解答を比べます。
確認するのは、
問いに答えているか。
文末が問いに合っているか。
必要な根拠が入っているか。
理由や前後関係が分かるか。
余計な情報が入っていないか。
という点です。
模範解答を丸ごと写すのではなく、自分の答案に何を足し、何を削ればよいかを考えます。
この比較が、次の記述問題につながります。
【保護者がやってはいけない直し方】
国語記述の直しで、保護者がやりすぎると、子どもは自分で考えなくなります。
特に注意したいのは、大人が完成文を作ってしまうことです。
「こう書けばいいよ」
「この言葉を入れなさい」
「答えはこうでしょ」
と整えれば、その場の答案はよくなります。
しかし、入試本番で子どもが一人で再現できなければ意味がありません。
また、
「もっと詳しく書いて」
「ちゃんと説明して」
「本文をよく読んで」
という声かけも、子どもには抽象的すぎます。
どこを詳しくするのか。
何が足りないのか。
本文のどこを見るのか。
どの要素を入れるのか。
ここを具体的に分ける必要があります。
保護者の役割は、正解文を与えることではありません。
子どもがどの処理で止まっているのかを見つけることです。
【記述が苦手な子は、書く前の処理を見直す】
国語記述が苦手な子を見ると、つい「もっと書かせなければ」と考えます。
しかし、書く量を増やすだけでは改善しないことがあります。
問いを正確に読めていない。
答えの着地点が決まっていない。
根拠を探せていない。
必要な情報を選べていない。
得点に必要な要素を整理できていない。
この状態で何度書いても、同じずれを繰り返します。
記述問題で大切なのは、書く前の処理です。
何を聞かれているのか。
最後をどんな言葉で終えるのか。
本文のどこを使うのか。
どの要素を入れるのか。
何を削るのか。
どの順番でつなぐのか。
ここが整えば、答案は少しずつ安定します。
【まとめ】
中学受験の国語記述が苦手な子は、単に文章力がないとは限りません。
問いが何を求めているか分からない。
答えの着地点が決まっていない。
本文のどこを使えばよいか分からない。
必要な情報を選べない。
きれいな文章を作ろうとして、得点に必要な要素を落としている。
口頭の考えを答案へ変換できない。
模範解答を写して終わっている。
こうした問題が重なっていることがあります。
家庭で直すときは、最初から完成した答案を求めないことです。
問いと条件に印をつける。
答えの着地点を決める。
本文の根拠に線を引く。
必要な部品を書き出す。
字数に合わせて余分な部分を削る。
自分の答案との差を見る。
この順番で整理します。
特に心情記述では、最後をどのような気持ちで終えるかを先に決めると、答案がぶれにくくなります。
国語記述は、思いついたことを自由に書く問題ではありません。
問いを読み、必要な根拠を選び、得点につながる要素を限られた字数の中へ配置する問題です。
大切なのは、たくさん書かせることではありません。
子どもがどの処理で止まっているのかを、見えるようにすることです。
