「宿題は終わった?」
「終わった」
そう言っていたのに、後で確認すると終わっていない。
「テスト直しはした?」
「やったよ」
と言ったのに、途中で止まっている。
中学受験の家庭では、決して珍しい話ではありません。
保護者面談でも、
「最近、嘘をつくようになった気がするんです」
という相談を受けることがあります。
親としては苦しいものです。
信じていたのに。
応援しているのに。
なぜ本当のことを言ってくれないのだろう。
特に真面目な家庭ほど、この問題に深く傷つきます。
ただ、サクラサク編集部が多くの受験生を見てきて感じるのは、多くの場合、子どもは親を騙そうとしているわけではないということです。
【子どもは最初から嘘つきではない】
小学生は本来、とても正直です。
宿題をやっていなければ、
「まだやっていない」
と言います。
分からなければ、
「分からない」
と言います。
ところが中学受験が始まると、少しずつ変化が起きることがあります。
本当のことを言った時の親の反応を、子どもはよく見ています。
「まだ終わっていない」
と言った時、
親がため息をつく。
予定表を確認する。
焦った表情になる。
もちろん親に悪気はありません。
心配だからです。
何とかしてあげたいからです。
しかし子どもは別のことを学びます。
本当のことを言うと、親が困る。
本当のことを言うと、空気が重くなる。
そう感じ始めることがあるのです。
【嘘の正体は悪意ではない】
多くの親は、
「嘘をついてはいけない」
と言います。
もちろん、その通りです。
ただ、受験期の子どもの嘘には少し特徴があります。
「あとでやるつもりだった」
「今から始めようと思っていた」
「少しだけやったから大丈夫だと思った」
こうした曖昧なものが少なくありません。
大人から見れば嘘です。
しかし子どもの中では、
「そうなってほしい自分」
を先に答えている場合があります。
まだ小学生なのです。
理想と現実の区別が曖昧なまま話してしまうこともあります。
そこへ親の期待が重なる。
すると、願望だったものが少しずつ隠し事へ変わっていきます。
【真面目な家庭ほど起きやすい理由】
実はこの現象は、
勉強を大切にしている家庭ほど起きやすい傾向があります。
親の熱量が高いからです。
子どものためを思っている。
受験を成功させたい。
少しでも良い結果を出してほしい。
だから確認する。
だから管理する。
だから改善しようとする。
どれも善意です。
しかし、その善意が大きくなるほど、子どもにとっては「期待」として伝わることがあります。
期待そのものは悪いものではありません。
問題は、
期待に応えられなかった時です。
宿題が終わらなかった。
テストが悪かった。
復習が間に合わなかった。
そんな時、本当のことを言うよりも、少し隠した方が楽になる。
そこから嘘が生まれることがあります。
【本当に怖いのは嘘ではない】
実は、
宿題をごまかした。
テスト結果を隠した。
それ自体は大問題ではありません。
本当に怖いのは、
困った時に本当のことが言えなくなることです。
分からない。
終わらない。
やる気が出ない。
助けてほしい。
そういう言葉が出なくなる。
すると親は子どもの状態が分からなくなります。
子どもは一人で抱え込みます。
そして問題が大きくなってから表面化する。
こちらの方がはるかに深刻です。
学力面でも同じです。
分からない単元があっても言えない。
苦手科目を隠す。
模試のミスを話さない。
こうした状態になると改善が遅れます。
だから成績も崩れやすくなるのです。
【伸びる家庭は何が違うのか】
伸びる家庭は、
嘘をつかない家庭ではありません。
本当のことを言える家庭です。
「終わらなかった」
「今日は集中できなかった」
「ここが分からなかった」
そうした言葉が自然に出てきます。
そして親も、
すぐ評価しない。
すぐ解決しようとしない。
まず聞く。
受け止める。
もちろん、
「終わらなかった」
と聞けば、
「どうして?」
と聞きたくなるでしょう。
それも自然な反応です。
ただ、そこで少し待つ。
「そっか」
と返してみる。
すると子どもは意外なほど話し始めます。
「実は途中で分からなくなった」
「算数をやろうと思ったけど国語をやっていた」
「やる気が出なかった」
こうした情報が早い段階で出てくれば、修正も早くなります。
【親が見るべきもの】
家庭学習で本当に大切なのは、
宿題が終わったかどうかだけではありません。
子どもが自分の状態を言葉にできているかどうかです。
だから、
「終わった?」
だけではなく、
「どこが難しかった?」
と聞いてみる。
「大丈夫?」
ではなく、
「どこで止まった?」
と聞いてみる。
すると会話の目的が、
確認から共有へ変わっていきます。
【まとめ】
中学受験で問題なのは、
子どもが嘘をつくことではありません。
嘘をつかなければならない空気が生まれることです。
真面目な家庭ほど、子どもへの期待は大きくなります。
だからこそ大切なのは、
正しい報告を求めることではなく、
どんなバッドニュースでも話せる関係を残しておくことです。
「実は終わっていない」
「ここが分からない」
そう言える家庭は強い。
なぜなら問題が小さいうちに共有されるからです。
中学受験で本当に育てたいのは、完璧な子どもではありません。
困った時に助けを求め、自分の状態を正直に伝えられる子です。
その力は受験だけでなく、その先の人生でも大きな財産になっていくのです。

