模試の結果が返ってくる。
偏差値を見る。
順位を見る。
そして、思わずため息が出る。
中学受験では珍しくない光景です。
保護者面談でも、
「成績が下がってしまいました」
「模試の偏差値が落ちました」
「このまま夏期講習に入って大丈夫でしょうか」
という相談を、この時期になるとよく受けます。
特に小6の夏前は、多くの家庭が不安になります。
勉強時間は増えている。
塾にも通っている。
宿題もやっている。
それなのに結果が出ない。
すると、
「もっと勉強量を増やした方がいいのではないか」
「何か特別な教材が必要なのではないか」
と考え始めます。
ただ、長く受験指導をしていると感じることがあります。
成績が伸びる家庭ほど、模試を「判定」として見ていません。
むしろ、
「診断」
として見ています。
ここに大きな違いがあります。
【偏差値は結果であって原因ではない】
偏差値は便利です。
今どの位置にいるのかが分かる。
志望校との差も見える。
数字で比較もできます。
だからこそ、多くの家庭はまず偏差値を見ます。
それ自体は自然なことです。
しかし、偏差値には一つ大きな弱点があります。
原因が見えないのです。
偏差値50。
偏差値55。
偏差値60。
数字は分かる。
けれど、
なぜその結果になったのかは分かりません。
計算ミスなのか。
知識不足なのか。
問題文の読み違いなのか。
時間配分なのか。
ケアレスミスなのか。
偏差値は結果を教えてくれます。
しかし、
何を直せば良いのかまでは教えてくれません。
だから成績が下がった時ほど、
数字だけを見ていてはいけないのです。
【小6夏前の模試は合否判定ではなく診断テスト】
ここで知っておきたいことがあります。
小6夏前までの模試は、多くの場合出題範囲があります。
つまり、
入試本番のような総合力テストではありません。
これまで学習した単元が、
どれだけ定着しているかを確認するテストです。
だから本当に見るべきなのは、
偏差値ではなく、
どの単元で得点し、
どの単元で失点したかです。
例えば算数。
割合はできている。
しかし比になると崩れる。
速さは取れている。
しかし場合の数になると止まる。
国語なら、
物語文は読める。
しかし説明文になると根拠が拾えない。
社会なら、
地理は得点できる。
しかし歴史の流れが整理できていない。
こうした情報は偏差値からは見えません。
しかし、
夏期講習で何を重点的に復習するべきかは、
ここから見えてきます。
夏前の模試は、
志望校判定のためだけに受けるものではありません。
夏の学習計画を作るための診断テストなのです。
【同じ60点でも意味は全く違う】
例えば算数で60点だったとします。
一人は計算ミスで20点落としている。
本来なら80点近く取れる状態です。
もう一人は基本問題そのものが理解できていない。
こちらも60点です。
しかし必要な対策は全く違います。
前者は、
途中式の書き方。
計算スペースの使い方。
見直しの方法。
そうした学習習慣の改善が必要です。
後者は、
単元そのものの理解をやり直さなければなりません。
同じ点数でも、
必要な処方箋は全く違うのです。
だから模試の点数だけを見ても意味がありません。
答案まで見て初めて、
次の一手が見えてきます。
【答案には学習の癖が残る】
答案を見ると、
その子の学習習慣が見えてきます。
途中式がない。
図が描かれていない。
問題文への書き込みがない。
条件整理をしていない。
逆に、
途中式が残っている。
図を描いている。
条件に印を付けている。
こうした答案は、
たとえ点数が低くても改善しやすい。
なぜなら、
どこで崩れたかが見えるからです。
模試は点数を付けるためだけのものではありません。
学習の癖を発見するための材料でもあります。
【成績が下がった時ほど慌てない】
模試の結果が悪いと、
親は焦ります。
問題集を増やそう。
勉強時間を増やそう。
もっとやらせよう。
そう考えたくなります。
しかし、
原因が分からないまま勉強量だけを増やしても、
同じ失敗を繰り返すことがあります。
割合が苦手なのに全単元を復習する。
説明文が弱いのに国語全体をやり直す。
これでは効率が良くありません。
まず必要なのは、
診断です。
どこが弱いのか。
何ができていないのか。
どの単元を夏期講習で重点的に補強するべきなのか。
そこを把握することです。
【夏期講習は弱点を修正するためにある】
保護者の中には、
夏までに完成させなければならない、
と思っている方もいます。
しかし実際には、
小6の夏前に完成している受験生はほとんどいません。
だからこそ夏期講習があります。
夏期講習は、
完成した子がさらに伸ばすためだけのものではありません。
弱点を見つけ、
修正し、
もう一度積み上げるための時間です。
だから6月や7月の模試は、
合否を占うものではなく、
夏に向けた課題を発見するためにあるのです。
【まとめ】
中学受験で成績が下がった時、
最初に偏差値を見るのは自然なことです。
しかし、
偏差値は結果であって原因ではありません。
特に小6夏前までの模試は、
合否判定ではなく診断テストです。
どの単元が得点源なのか。
どの単元が失点源なのか。
どこで理解が止まっているのか。
それを知ることが、
夏期講習を有効に使う第一歩になります。
まずは手元の模試答案を見ながら、
どの単元で失点しているのか、
どんな間違い方が続いているのかを確認してみてください。
夏期講習をただ受けるだけで終わらせるのではなく、
答案から見えた課題を持って夏に入ること。
それが、小6夏前の模試を本当に意味のあるものに変える第一歩なのです。

