夏期講習が始まった頃は、朝から机に向かい、予定表に沿って宿題を進めていた子も、8月に入ると少しずつ疲れが見え始めます。
起きる時間が遅くなる。
宿題に取りかかるまで時間がかかる。
丸つけや間違い直しが後回しになる。
保護者から見ると、「せっかくここまで頑張ってきたのに、このままで大丈夫だろうか」と不安になる時期です。
しかし、夏期講習の後半に伸びる子は、前半以上に勉強量を増やしているとは限りません。
むしろ、ここまでの学習を振り返り、何を続け、何を減らし、何を優先するかを切り替えています。
夏休み後半は、前半と同じやり方を繰り返す時期ではありません。
ここから必要になるのは、量を積み上げる力よりも、学習を整理する力です。
夏期講習の後半は「疲れ」が出て当然
夏期講習の前半は、子どもも気持ちが高まっています。
新しいテキストを受け取り、講習の日程が始まり、いつもとは違う生活リズムの中で勉強を進めます。
ところが、二週間、三週間と続くと、少しずつ疲労が蓄積します。
授業を受ける。
宿題をする。
丸つけをする。
間違い直しをする。
翌日の準備をする。
一つひとつは特別なことではありませんが、毎日続けば負担になります。
特に中学受験の夏期講習では、一日の授業時間が長く、扱う単元も多くなります。通常授業より速いペースで複数の内容を扱うこともあります。
前半と同じ集中力を、夏休みの最後まで維持できる子ばかりではありません。
ここで大切なのは、疲れていることを「やる気がなくなった」と決めつけないことです。
疲労と意欲は別のものです。
勉強を嫌がっているように見えても、実際には、やるべきことが多すぎて動けなくなっている場合があります。
伸びる子は「全部やる」から離れていく
夏期講習の前半は、まず授業についていき、出された課題を終わらせることが中心になります。
しかし、後半になっても「すべてを同じようにやる」ことにこだわると、学習が回らなくなることがあります。
宿題を全部終わらせる。
すべての間違いを直す。
すべての単元を復習する。
毎日予定どおり進める。
理想としては正しくても、現実には時間も集中力も限られています。
ここから伸びる子は、できていないものをすべて抱え込むのではなく、優先順位をつけ始めます。
たとえば、算数の間違い直しが十問残っていたとします。
その十問を、すべて同じように扱う必要はありません。
計算ミスだった問題。
解説を読めば理解できた問題。
考え方そのものが分からない問題。
以前にも同じ間違いをした問題。
学習効果が高いのは、考え方が分からない問題や、同じ間違いを繰り返している問題です。
一方で、すでに理解できている問題に長い時間をかけても、伸びにはつながりにくいことがあります。
夏期講習後半に必要なのは、残っている課題を全部消すことではありません。
今の自分にとって重要な課題を見つけることです。
前半の計画を一度リセットする
夏休み前に、細かい学習計画を立てた家庭も多いでしょう。
午前中は算数。
午後は夏期講習。
夜は理科と社会の暗記。
週末に一週間分の復習。
ところが、実際に始まると、計画どおりに進まない日が出てきます。
授業が長引く。
宿題に予想以上の時間がかかる。
体調を崩す。
家族の予定が入る。
それでも、最初の計画を守ろうとすると、未達成の予定が積み重なります。
昨日できなかったことを今日に足す。
今日できなかったことを明日に回す。
こうして、一日の学習量が現実離れしていきます。
夏期講習の後半に入ったら、一度、最初の計画を手放して構いません。
これまでの遅れをすべて取り戻す計画ではなく、残りの期間で本当にできる計画へ作り直します。
このとき、予定表を見るより先に、教材を実際に並べてみることが大切です。
終わっているもの。
途中まで進んでいるもの。
手をつけていないもの。
間違い直しが必要なもの。
見える形にすると、「何となく遅れている」という不安が、具体的な課題に変わります。
不安は、量が見えないときに大きくなります。
整理できれば、全部を終わらせなくても、次に何をすればよいかが見えてきます。
点数よりも「間違い方」を見る
夏期講習中には、確認テストやまとめテストが行われることがあります。
点数が上がれば安心し、下がれば不安になる。
これは自然なことです。
ただし、夏期講習後半に見るべきなのは、点数だけではありません。
同じ70点でも、内容は違います。
知識が抜けていて失点したのか。
問題文を読み違えたのか。
時間が足りなかったのか。
途中式を書かずに計算ミスをしたのか。
難しい問題に時間を使いすぎたのか。
点数は結果ですが、間違い方には次の学習への手がかりがあります。
伸びる子は、間違えたことを必要以上に責めません。
その代わりに、「なぜ間違えたか」を少しずつ言葉にできるようになります。
「分からなかった」だけではなく、
「条件を一つ見落とした」
「公式は覚えていたが、使う場面が分からなかった」
「最初の問題に時間をかけすぎた」
というように、原因を細かく捉えます。
原因が分かれば、次に直す行動も具体的になります。
夏期講習は、すべての問題をできるようにする場ではありません。
自分の間違い方を知る場でもあります。
親の役割も「管理」から「整理」へ変える
夏期講習の前半は、生活リズムや宿題の進み具合を保護者が確認する場面も多いでしょう。
「宿題は終わったの?」
「丸つけはした?」
「明日の準備はできた?」
始まったばかりの時期には、こうした声かけが必要なこともあります。
ただ、後半になっても確認が増え続けると、親子ともに疲れてしまいます。
子どもは、やるべきことが分かっていても、できていない自分を責められているように感じることがあります。
保護者も、何度言っても動かない姿を見るたびに、言葉が強くなっていきます。
ここからは、管理するよりも、一緒に整理する関わり方へ変えていく時期です。
「全部終わっていないね」ではなく、
「残っているものを一度並べてみよう」
「なぜできないの」ではなく、
「どこからなら始められそう?」
「今日中に全部やりなさい」ではなく、
「今日一つ終わらせるなら、どれにする?」
同じ課題を見ていても、問いかけ方が変わると、子どもの受け止め方も変わります。
もちろん、どのような声かけで動きやすいかは、子どもによって違います。
細かく確認されると安心する子もいれば、自分で選ばせてもらった方が動きやすい子もいます。
励まされて力が出る子もいれば、静かに見守られた方が集中できる子もいます。
夏期講習後半は、勉強の進め方だけでなく、親子の関わり方を調整する時期でもあります。
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後半の目標は「夏を完璧に終えること」ではない
夏休みが終わる頃、保護者はどうしても成果を求めたくなります。
苦手単元を克服できた。
模試の点数が上がった。
勉強時間が増えた。
宿題をすべて終えた。
目に見える成果があれば安心できます。
しかし、夏期講習の成果は、すぐに点数へ表れるものばかりではありません。
長い授業に通い続けた。
自分の苦手に気づいた。
分からない問題を質問できた。
疲れても翌日に学習へ戻れた。
課題の優先順位を考えられるようになった。
こうした変化も、受験に向かう力の一部です。
夏期講習後半に大切なのは、前半の遅れをすべて取り戻すことではありません。
残りの期間で、何を身につけたいかを明確にすることです。
一つの苦手を整理する。
間違い直しのやり方を覚える。
生活リズムを立て直す。
自分から机に向かう時間を一度つくる。
小さくても、次につながる変化を残せれば、夏は無駄になりません。
夏期講習の後半は、頑張りをさらに上乗せする時期ではなく、これまでの学習を整理し、自分に必要なものへ切り替える時期です。
全部できなくても構いません。
何を残し、何を手放し、何を次につなげるか。
その判断ができるようになることこそ、夏休み後半の大きな成長です。
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