勉強の話をすると、黙る。
「分かってる」とだけ言う。
「もうやった」と言って、ノートを見せたがらない。
夏期講習が近づくころ、こうした反応が増える子もいます。
保護者から見ると、
「やる気がない」
「反抗的になった」
「受験生としての自覚が足りない」
と感じるかもしれません。
しかし、子どもが話さなくなることを、態度や性格だけで説明することはできません。
間違いを見せると叱られる。
終わっていないと言うと、さらに課題を増やされる。
分からないと言うと、ため息をつかれる。
そうした経験が重なると、子どもは本当の学習状況を隠すようになります。
夏前に見直したいのは、子どもの態度だけではありません。
子どもが、つまずきを話しにくい状態になっていないかということです。
【反抗より問題なのは、つまずきが見えなくなること】
子どもが不機嫌になると、親子関係そのものが気になります。
しかし、家庭学習の面でより大きな問題は、学習の中身が見えなくなることです。
たとえば、算数の問題を間違えたとします。
原因は一つではありません。
- 問題文の条件を読み落とした
- 図を書かずに考えた
- 使う公式を間違えた
- 割合の意味を理解できていなかった
- 計算だけを間違えた
原因が違えば、直し方も変わります。
ところが、子どもが、
「もう分かった」
「見せたくない」
「別にいい」
と話を閉じてしまうと、どこで止まったのかが分かりません。
親は、点数や勉強時間、宿題が終わったかどうかだけで判断することになります。
しかし、本当に知りたいのは、
どこで間違えたのか。
なぜ止まったのか。
次に何を変えればよいのか。
という中身です。
子どもが話さなくなると、家庭ではその判断材料が失われます。
【子どもがつまずきを隠す理由】
子どもが間違いや未完成の課題を隠すのは、単なる反抗とは限りません。
家庭の中で、
「できていないことを見せると責められる」
と感じている場合があります。
分からないと言うと、
「授業で習ったでしょう」
と言われる。
間違いを見せると、
「また同じところ?」
と言われる。
宿題が終わっていないと言うと、
「どうして早くやらなかったの?」
と責められる。
保護者に悪気はなくても、子どもは、
「正直に言うと嫌なことが増える」
と学んでいきます。
すると、
分からないことを隠す。
終わっていないことを隠す。
間違い直しをした形だけ整える。
「やった」と答えて会話を終わらせる。
という行動が増えます。
これは、子どもがずるいからとは限りません。
自分を守るために、その場を早く終わらせようとしていることがあります。
【確認を増やすほど、中身が見えなくなることもある】
夏前は、保護者の不安が大きくなる時期です。
模試の結果。
苦手単元。
塾の宿題。
夏期講習までに終わらせたい課題。
気になることが増えるほど、確認も増えます。
「宿題は終わったの?」
「間違い直しはやった?」
「何ページ進んだの?」
「今日は何分勉強したの?」
こうした確認が必要なこともあります。
ただし、見やすいものだけを確認し続けると、子どもは確認を通過するための勉強を始めることがあります。
ノートの空欄を埋める。
答えを赤で写す。
丸つけだけを済ませる。
ページ数だけ進める。
これで「やった」と言える形を作ります。
机に向かった時間や終わったページ数は、学習の一部です。
しかし、それだけでは理解できたかどうかは分かりません。
確認する量を増やす前に、何を見るかを決める必要があります。
【親が見るポイントを変える】
夏前に見たいのは、勉強の見た目だけではありません。
次のような中身を確認します。
- どこで止まったのか
- 間違えた原因を一つ説明できるか
- 解説を閉じて、もう一度解けるか
- 次に同じミスを防ぐ方法が決まっているか
- 今やる問題と、後回しにする問題を分けられているか
たとえば、長い時間勉強していても、間違えた原因が分からなければ、次も同じ失点をする可能性があります。
反対に、短い時間でも、
「条件を一つ読み落とした」
「次は数字に線を引く」
「この問題は今は難しいので、塾で質問する」
と整理できていれば、次の行動につながります。
親が見るポイントが変わると、子どもも見た目だけを整える必要がなくなります。
【つまずきを話しやすくする声かけ】
子どもが話しやすい状態を作るために、何でも許す必要はありません。
大切なのは、間違いや未完了を責める前に、次の行動へつなげることです。
たとえば、
「なんで分からないの?」
ではなく、
「どこまでは分かった?」
と聞きます。
「また間違えたの?」
ではなく、
「今回はどこで止まったか見よう」
と声をかけます。
「どうして終わっていないの?」
ではなく、
「今日やるものと、明日に回すものを分けよう」
と整理します。
子どもが、
「分からない」
「間違えた」
「終わっていない」
と言ったときに、すぐ責任を追及しないことが大切です。
その情報をもとに、
何を戻すか。
何を減らすか。
何を塾へ相談するか。
何を夏期講習に回すか。
を決めます。
正直に話すことが、次の行動につながると分かれば、子どももつまずきを隠しにくくなります。
【親の不安を、そのまま子どもへ渡さない】
子どもが反抗的に見えると、親の不安はさらに大きくなります。
「このままで夏を迎えて大丈夫なのか」
「もっと厳しく言わなければいけないのでは」
と思うこともあるでしょう。
しかし、不安のまま確認や叱責を増やすと、子どもはさらに話さなくなることがあります。
夏前に必要なのは、不安を強い言葉へ変えることではありません。
親の中で課題を整理することです。
- 今週取り組むこと
- 夏期講習に回すこと
- 塾へ相談すること
- 今は深追いしないこと
すべてを子どもへ渡さず、先に親が優先順位を決めます。
そのうえで、
「今日はこの二つだけ確認しよう」
「これは塾で聞くものにしよう」
「これは今はやらなくていい」
と具体的に伝えます。
やることの終わりが見えれば、子どもも動きやすくなります。
【まとめ】
中学受験の夏前に、子どもが反抗的になることがあります。
勉強の話をすると黙る。
「分かってる」と言う。
ノートや間違い直しを見せたがらない。
こうした反応を、すぐにやる気や性格の問題と決めつけないことが大切です。
子どもが話さなくなると、家庭では本当のつまずきが見えなくなります。
どこで止まったのか。
なぜ間違えたのか。
何を戻す必要があるのか。
何を今は後回しにするのか。
その判断ができなくなります。
夏前に親が作りたいのは、何でも許す家庭ではありません。
間違いや未完了を隠さず話せる家庭です。
親の役割は、細かく監視することではありません。
子どもから見えてきたつまずきを整理し、次にやることを決めることです。
強く問い詰める前に、
「どこまでは分かった?」
と聞いてみる。
そこから、夏前の家庭学習を立て直していきましょう。
カテゴリ:家庭学習
【あわせて読みたい】
中学受験の夏前に親が言ってはいけない言葉|子どものやる気を下げない関わり方
中学受験の夏前に親子関係が悪くなる理由|6月に見直したい声かけ

