作文の練習は何から始める?小学生が書きやすくなる5つの基本

作文の宿題を前にして、子どもの手が止まっていることがあります。

「何を書けばいいのか分からない」

「書きたいことはあるけれど、うまく文章にならない」

「最初の1文を書いたあとが続かない」

こうした様子を見ると、保護者はテーマを一緒に考えたり、使えそうな言葉を教えたりしたくなります。

もちろん、その手助けが必要な場面もあります。

ただ、作文が苦手な子の多くは、書くことが何もないわけではありません。

自分の中にある体験や気持ちを、読む相手に伝わる順番へ整理する方法が分からないのです。

作文とは、思ったことをそのまま書き出す作業ではありません。

自分の体験を振り返り、必要な材料を選び、相手に伝わる形へ組み立て直す作業です。

難しい言葉や表現を増やす前に、まずは文章を組み立てる基本の型を身につける必要があります。

作文は思いついたまま書くものではない

小学生に作文を書かせると、出来事を思い出した順番に書き始めることがあります。

途中で別の出来事を思い出し、話が前後することもあります。

書いている本人の頭の中ではつながっていても、読む相手には状況が伝わりません。

また、起きたことを最初から最後まですべて書こうとして、出来事の羅列になることもあります。

「朝、学校へ行きました。バスに乗りました。公園に着きました。お弁当を食べました。帰りました。楽しかったです」

何をしたのかは分かります。

しかし、その子がどの場面に心を動かされたのか、なぜその出来事を書こうと思ったのかは見えてきません。

作文は、自分の頭の中にあることを、そのまま原稿用紙へ移すものではありません。

その出来事を知らない相手にも分かるように、情報を選び、順番を整え、気持ちや考えを加えるものです。

そのため、最初から原稿用紙に書き始めるよりも、まず材料を整理する時間を取った方が、文章は書きやすくなります。

基本1 体験を時系列で整理する

最初に、起きた出来事を時間の順番に並べます。

たとえば、遠足について書くのであれば、次のように整理できます。

学校に集合した。

バスで目的地へ向かった。

友達とお弁当を食べた。

班で施設を見学した。

帰りのバスで遠足を振り返った。

この段階では、きれいな文章にする必要はありません。

付箋やメモ用紙に、起きたことを短く書くだけでも十分です。

「いつ」「どこで」「誰と」「何をしたか」を簡単に書き出すだけでも、頭の中は整理されます。

出来事を順番に並べることで、「何から書けばよいか分からない」という状態から抜け出しやすくなります。

ただし、時系列で整理した内容を、そのまますべて作文にするわけではありません。

時系列は、作文に使える材料を見つけるための準備です。

材料が並んだあとに、どの場面を中心に書くのかを決めます。

基本2 中心となる場面を1つに絞る

作文を書くとき、起きたことをすべて入れようとすると、文章が散らかりやすくなります。

旅行について書く場合でも、家を出てから帰宅するまでを同じ分量で書く必要はありません。

道に迷った場面。

初めて見た景色。

家族と交わした会話。

予想していなかった出来事。

その中から、自分の気持ちが最も動いた場面を1つ選びます。

たとえば、遠足全体について書くのではなく、「高い場所が苦手だったけれど、友達に励まされて展望台に登った場面」を中心に書くことができます。

中心となる場面が決まれば、集合や移動の話は短くまとめられます。

一方で、展望台に登る前の不安、友達の言葉、登ったあとの景色や気持ちは詳しく書けます。

作文の中心が決まると、詳しく書くところと、省くところが見えてきます。

出来事の数を増やすよりも、1つの場面を具体的に書く方が、その子にしか書けない作文になりやすいのです。

基本3 出来事と気持ちをセットで書く

作文が出来事の説明だけで終わると、行動の記録に近い文章になります。

「公園へ行きました。遊具で遊びました。お弁当を食べました。楽しかったです」

起きたことは分かります。

しかし、どの場面が心に残ったのか、その子が何を感じたのかまでは伝わりません。

作文では、「何があったか」に加えて、「そのとき何を感じたか」を書きます。

たとえば、次のように考えます。

高い遊具に登る前は怖かった。

友達が先に登るのを見て、自分も挑戦しようと思った。

登り切ったときは、うれしいというより安心した。

このように、出来事と気持ちを組み合わせると、単なる報告ではなく、その子自身の体験として伝わる文章になります。

ここで大切なのは、「楽しかった」「うれしかった」と書くだけで終わらせないことです。

なぜ楽しかったのか。

最初から楽しかったのか。

途中で気持ちは変わったのか。

誰かの言葉や行動が影響したのか。

こうした点まで振り返ると、作文の内容は深まります。

保護者が「もっと詳しく書きなさい」と言うだけでは、子どもは何を足せばよいのか分かりません。

「その前はどんな気持ちだった?」

「友達に言われたとき、どう思った?」

と具体的に尋ねる方が、書く材料を見つけやすくなります。

基本4 1文を短くする

子どもは考えながら文章を書くと、1つの文に多くの出来事を詰め込みやすくなります。

「公園に行って友達と遊んでいたら雨が降ってきたので屋根のあるところへ移動してお弁当を食べました」

意味は伝わりますが、1文が長くなるほど、出来事の順番や気持ちの変化が分かりにくくなります。

この文は、次のように分けられます。

公園で友達と遊びました。

しばらくすると、雨が降ってきました。

私たちは、屋根のある場所へ移動しました。

そこで、お弁当を食べました。

1文を短くすると、文章が読みやすくなります。

それだけではありません。

「雨が降ったときにどう思ったか」「屋根のある場所で友達と何を話したか」など、どの場面に説明や気持ちを加えるのかも考えやすくなります。

最初から上手な文章を書こうとするよりも、まずは1文に1つの内容を書くことを意識した方が、作文の土台は整います。

基本5 読む相手に伝わるか確認する

作文は、自分の気持ちを表すものであると同時に、読む相手に向けて書くものでもあります。

書いている本人には分かっている人物や場所でも、読む人には分からないことがあります。

「そこへ行きました」

「あの人が言いました」

「それが楽しかったです」

このような表現が続く場合は、「そこ」「あの人」「それ」が何を指しているのか確認します。

また、家族の中では通じる呼び方や、その場にいた人にしか分からない説明もあります。

作文を書き終えたあとに、本人が音読するのも効果的です。

音読すると、文の長さ、言葉の重なり、説明の足りない部分に気づきやすくなります。

保護者がすぐに赤ペンで直すのではなく、

「この場面を知らない人にも伝わるかな」

「誰が話したのか分かるかな」

「ここで、どんな気持ちになったのかな」

と尋ねることで、子ども自身が文章を見直すきっかけになります。

作文を直す力も、書く力の一部です。

家庭での作文練習は短くてよい

作文の練習というと、毎回400字や800字を書かせようとする家庭があります。

しかし、作文に慣れていない子にとって、長い文章を書くことは大きな負担です。

毎回長く書こうとすると、作文そのものを嫌いになることもあります。

最初は、3つの文でも構いません。

今日あったこと。

そのとき感じたこと。

なぜそう感じたのか。

この3点を書くことでも、作文の基本的な練習になります。

たとえば、

「今日、算数の問題が解けました」

「最初は難しいと思っていたので、うれしかったです」

「図を書いたら、考え方が分かりました」

これだけでも、出来事、気持ち、理由がそろっています。

慣れてきたら、会話、周囲の様子、気持ちの変化を少しずつ加えていきます。

大切なのは、長く書くことではありません。

自分の体験を整理し、相手に伝わる形へ整える経験を積み重ねることです。

作文の型は、子どもの表現を狭めない

作文の「型」と聞くと、子どもの自由な発想を抑えてしまうように感じるかもしれません。

しかし、型は書く内容を決めるものではありません。

作文を書くときの基本は、次の5つです。

・時系列での整理
・中心となる場面の限定
・出来事と気持ちのセット化
・1文の短縮
・読む相手への伝わりやすさの確認

こうした土台があることで、子どもは自分の体験や考えを表現しやすくなります。

書き方が分からない状態で「自由に書いていい」と言われても、子どもはかえって困ってしまいます。

まずは、相手に伝わる形を知る。

そのうえで、どの場面を選ぶか、どんな言葉を使うか、何を感じたと表現するかに、その子らしさが表れていきます。

作文の上達は、特別な言葉を覚えることから始まるのではありません。

自分の中にある出来事や気持ちを整理し、読む相手に渡せる形へ整えることから始まります。

この基本は、学校の作文だけでなく、中学受験の記述問題や、公立中高一貫校の適性検査作文にもつながっていきます。