夏休みも後半になると、算数のテキストにはたくさんの印が残っています。
丸がついた問題。
一度間違えて、解き直した問題。
先生から印をつけてもらった問題。
そして、まだ解けないままの問題。
保護者がそのテキストを見ると、やはり気になるのは間違えた問題です。
「夏休み中に、全部もう一度やった方がいいのでは」
そう考えるのは自然なことだと思います。
ただ、残り時間が少なくなった夏休み後半に、間違えた問題をすべて解き直そうとすると、かえって大切な復習が埋もれてしまうことがあります。
算数の復習で大切なのは、解き直す量ではありません。
どの問題を、もう一度考えるのか。
そして、必要ならどこまで戻るのか。
そこを見極めることです。
間違えた問題を全部やり直さなくてよい
夏期講習では、普段より多くの問題を解きます。
当然、間違える問題も増えます。
けれど、同じ×でも中身は違います。
計算を一か所間違えただけの問題。
問題文を読み違えた問題。
考え方は分かっていたけれど、途中で止まった問題。
解説を読んでも、なぜその式になるのか分からない問題。
これらを全部同じ「間違えた問題」として扱う必要はありません。
まず見るべきなのは×の数ではなく、
「その問題を今もう一度解く意味があるか」
です。
優先したいのは「もう少しで自力で解けそうな問題」
解き直しというと、最も難しかった問題から取り組ませたくなることがあります。
ただ、夏休み後半に優先したいのは、必ずしも難問ではありません。
私はむしろ、
「途中までは自分でできた」
「解説を聞いたら分かった」
「あと一歩で解けそうだった」
という問題を大切にしたいと考えています。
こうした問題には、子どもの中にすでに考えるための土台があります。
もう一度自分で考えることで、
「あのとき分からなかったことが、自分でできた」
という経験につながる可能性があります。
反対に、最初からまったく手が出なかった難問を何度も繰り返しても、解法を覚えるだけになることがあります。
復習は、難しい問題を攻略する時間だけではありません。
自分で考えられる範囲を少しずつ広げる時間でもあります。
計算でつまずいているなら、問題選びより先に土台を見る
ただし、ここで一つ注意したいことがあります。
文章題や応用問題を解き直していても、途中の計算で何度も止まる子がいます。
分数や小数の計算に時間がかかる。
途中式が乱れて、自分でもどこを間違えたか分からない。
簡単な計算ミスを何度も繰り返す。
こうした場合は、どの応用問題を選ぶか以前に、計算そのものを見直した方がよいことがあります。
考え方は合っているのに、計算で崩れている。
そうであれば、文章題を増やしても同じところで止まります。
必要なのは、
「この問題が解けなかった」
という結果を見ることではなく、
「どこで学習が止まっているのか」
を見ることです。
もし計算が土台になっているなら、そこまで戻る。
一見遠回りに見えても、その方が結果的には早く立て直せます。
算数では、難しい問題へ進むことだけが前進ではありません。
必要なところまで戻ることも、前に進むための大切な選択です。
「答えを覚えている問題」には注意する
解き直しをしていると、驚くほど早く正解することがあります。
「できるようになったね」
と言いたくなります。
ただ、少し確認したいことがあります。
本当に考えて解いたのか。
それとも、前回の答えや式を覚えていたのか。
特に、講習直後の解き直しでは答えを記憶していることがあります。
そんなときは、
「どうしてこの式にしたの?」
と聞いてみます。
説明できれば、考え方が残っている可能性があります。
うまく説明できなければ、正解していても理解が十分ではないかもしれません。
算数では、○になったかどうかだけでは見えない部分があります。
答えではなく、そこへ至る考え方が残っているか。
解き直しでは、そこを見たいところです。
同じ間違いを繰り返す問題は優先する
もう一つ、優先して見ておきたいのが、同じ原因で何度も間違えている問題です。
割合になると式を立てられない。
速さの問題で単位をそろえ忘れる。
図形になると条件を書き込まずに考え始める。
文章題で、何を求めるのか確認せず計算する。
問題は違っても、間違い方が同じことがあります。
この場合、一問ずつ別の問題として直すより、
「自分はどこで間違いやすいのか」
を見つけた方が次につながります。
たとえば、
「速さでは、最初に単位を見る」
「図形では、分かっている長さを書き込む」
というように、自分なりの確認ポイントを持てるようになります。
一つの×を○にすることより、次の問題で同じ間違いを減らすこと。
その方が、学習としては意味があります。
親が解き直す問題を全部決めない
保護者がテキストを見れば、
「これは大事だからやり直した方がいい」
と判断できることもあります。
もちろん、まだ自分で選ぶことが難しい子には助けが必要です。
ただ、少しずつ本人にも選ばせてみたいところです。
「この中で、もう一回やったらできそうなのはどれ?」
「先生の説明を聞いて分かった問題はある?」
「これは9月にもう一度やりたい、という問題は?」
そんなふうに聞くと、子ども自身が自分の理解を振り返ります。
自分が何を分かっていて、何をまだ分かっていないのか。
これは算数だけに必要な力ではありません。
学習そのものを自分で調整していくために必要な力です。
夏休み後半だからこそ、問題を減らす
残り一週間なのに、テキストには×が50問ある。
そんな状態なら、50問全部を解き直す計画は立てません。
たとえば、
基本なのに間違えた問題。
もう一度なら自力で解けそうな問題。
同じ原因で繰り返し間違えている問題。
そして、計算など土台の部分に戻る必要があるかどうか。
この四つを基準に見ていきます。
すると、本当に確認したい問題は10問になるかもしれません。
さらに、その中から今日は3問。
明日は2問。
というように分けます。
復習というと、できなかったものを全部回収するイメージがあります。
でも、限られた時間では「何をやらないか」を決めることも必要です。
問題を減らすことは、勉強を諦めることではありません。
大切な問題に、もう一度きちんと向き合うために減らすのです。
夏の算数は「できなかった問題の数」で終わらせない
夏期講習が終わるころ、テキストに残った×を見ると、不安になることがあります。
でも、その×は失敗の記録だけではありません。
どこまでなら自分で考えられるのか。
どんなところで間違えやすいのか。
何をもう一度学べばよいのか。
そして、どこまで戻れば立て直せるのか。
それを教えてくれる記録でもあります。
だから、夏休みの最後にすべての×を○に変える必要はありません。
むしろ、
「この問題は自分で解けるようになった」
「これはまだ難しいから、9月に戻ろう」
「ここは計算から見直した方がよさそうだ」
と分けられる方が、次の学習につながります。
算数の解き直しは、答えを合わせる作業ではありません。
自分の「分かる」と「まだ分からない」の境目を知り、必要ならその手前まで戻る時間です。
夏休み後半だからこそ、たくさん解くことより、どの問題をもう一度考えるのか。
そして、どこから立て直すのか。
そこから整理してみてください。
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