夏期講習では、国語の読解問題を何題も解いた。
宿題もやった。
間違えた問題の解き直しもした。
それなのに、模試や確認テストの点数を見ると、思ったほど変わっていない。
夏休みの終わりが近づくと、保護者から、
「これだけやったのに、国語が伸びません」
という相談を受けることがあります。
算数なら、計算ができるようになった、割合が分かるようになった、と変化が見えやすいものです。
ところが国語は、努力した分だけ点数が少しずつ上がるとは限りません。
私は国語の伸び方を、坂道よりも階段に近いと感じています。
しばらく同じ高さを歩いているように見える。
けれど、その間にも語彙が増え、文章の構造が見えるようになり、設問の意図をつかむ力が少しずつたまっている。
そして、あるところでそれらがつながると、急に一段上がる。
だから国語では、点数が動かない時期をすぐに「伸びていない」と判断しない方がよいのです。
国語は、少しずつ右肩上がりには伸びにくい
国語は、やった量と点数が比例しにくい教科です。
一週間読解問題を解いたから、翌週すぐに5点上がる。
語彙を覚えたから、そのまま偏差値に反映される。
そういう変化は、あまり起きません。
実際には、
文章を読むときに段落の役割が少し見えるようになる。
設問で何を聞かれているのか確認できるようになる。
選択肢を感覚だけで選ばず、本文へ戻るようになる。
記述で、必要な要素を意識できるようになる。
こうした小さな変化が水面下で積み重なっています。
外から見ると同じ点数でも、中ではかなり変わっていることがあります。
その積み重ねがある地点でつながると、急に一段上がる。
国語は、そういう伸び方をする子が少なくありません。
点数が変わらなくても、見るべき場所はある
たとえば、夏休み前も今回も60点だったとします。
数字だけ見れば、変化はありません。
でも答案を見ると、
以前は文章の内容自体をつかめていなかった。
今は内容は分かっているが、設問で何を聞かれているかを取り違えている。
ということがあります。
これは、同じ60点でも中身が違います。
あるいは、
以前は選択肢を感覚で選んでいた。
今は二つまで絞れるが、最後の判断で間違える。
という変化もあります。
これも、点数にはまだ出ていなくても、確実に一段階進んでいます。
国語の復習では、
「何点だったか」
だけでなく、
どこまでできるようになっているか
を見ることが大切です。
まず、文章そのものを読めていたかを見る
読解問題で間違えたとき、最初に確認したいのは、文章の内容をどこまで理解していたかです。
物語文なら、
誰の気持ちが変わったのか。
何がきっかけだったのか。
その前後で行動がどう変わったのか。
説明文なら、
何が問題として提示されているのか。
具体例は何を説明するために置かれているのか。
筆者が最終的に何を伝えたいのか。
こうしたことを、子ども自身の言葉で確認します。
細かな表現まで言えなくても、文章の大きな流れをつかめているなら、読む力はある程度育っています。
逆に、何について書かれていたのか自体が曖昧なら、設問の解き方より先に読み方を見直す必要があります。
文章は読めているのに、設問で落としている子もいる
国語では、文章を読めていることと、問題に正解できることは同じではありません。
「なぜですか」と聞かれているのに、気持ちだけを書いている。
「どのようなことですか」と聞かれているのに、理由を書いている。
「本文中の言葉を使って」とあるのに、自分の言葉だけで答えている。
こうした場合は、読解力ではなく、
問いを正確に読む力
に課題があります。
復習するときは、
「正解はこれ」
だけで終わらせず、
「この問題は何を聞いていた?」
と確認してみます。
設問の読み方が変わるだけで、点数が動き始める子もいます。
選択問題は、正解より「根拠」を見る
選択問題を間違えると、
「答えはイだよ」
で終わりがちです。
でも、それでは次の問題でまた同じことが起きます。
大切なのは、
なぜイなのか。
なぜアではないのか。
本文のどこが根拠なのか。
です。
二つの選択肢で迷う子は多いものです。
そのときに、
「よく読めば分かる」
と言っても、なかなか改善しません。
本文には書かれていない内容が足されている。
表現が強すぎる。
原因と結果が逆になっている。
登場人物の気持ちの変化する時点が違う。
こうした差を、本文に戻って確認します。
国語の解き直しは、正解を覚えるためではありません。
答えを決める根拠を探す練習です。
記述問題は、模範解答を書き写しても伸びない
記述問題の復習でよくあるのが、模範解答を書き写すことです。
ノートにはきれいな答えが残ります。
でも、それだけでは次の記述問題で同じように書けるとは限りません。
見るべきなのは、
自分の答案に何が足りなかったのか。
必要な要素が一つ抜けていたのか。
本文の言葉を使えていなかったのか。
理由と気持ちをつなげられていなかったのか。
設問に合った形で書けていなかったのか。
模範解答と比べて、
「自分には何がなかった?」
と考えます。
全部を直そうとしなくても構いません。
一つだけでも自分の癖が分かれば、次の問題で意識できます。
語彙で止まっているなら、読解問題を増やす前に戻る
国語が伸びない子の中には、知らない言葉が多くて、文章の意味を正確につかめていない子もいます。
抽象的な言葉が分からない。
慣用表現が曖昧。
接続語の働きがよく分からない。
そういう状態で読解問題を何題も解いても、同じところで止まりやすくなります。
この場合は、
「もっと長文を読ませよう」
ではなく、語彙や表現の理解まで戻った方がよいことがあります。
これは算数で、応用問題の前に計算を見直すのと似ています。
土台が不安定なら、そこまで戻る。
遠回りに見えても、その方が次の段差を上がりやすくなります。
時間が足りない子は、読む速度だけが原因とは限らない
国語のテストで最後まで終わらないと、
「読むのが遅い」
と考えがちです。
でも、実際には、
一つの選択肢で長く迷っている。
本文を何度も最初から読み直している。
記述を完璧に書こうとして時間を使っている。
ということもあります。
つまり、文章を読む速度ではなく、問題を解く途中で時間を使っている。
この場合、
「もっと速く読みなさい」
では改善しません。
どこで時間を使っているのかを見る必要があります。
国語では、答案だけでなく、解いている途中の様子にも大きなヒントがあります。
夏休み後半は、たくさん解くより「つまずき方」を見る
夏期講習で解いた読解問題を、全部やり直す必要はありません。
設問を読み違えた問題。
根拠を見つけられなかった選択問題。
あと一つ要素があれば正解だった記述問題。
同じ間違いを繰り返している問題。
こうした問題を選んで、
「なぜ間違えたか」
を見る方が意味があります。
国語の復習は、量を増やすことより、自分のつまずき方を知ることです。
そこが分かると、次の問題で見る場所が変わります。
親が答えを教えすぎない
国語の復習を一緒にしていると、保護者には答えが見えることがあります。
「ここに書いてあるでしょう」
「この言葉があるから答えはこれ」
と言いたくなることもあります。
その場では早く終わります。
でも、子どもが次の文章で同じように根拠を見つけられるとは限りません。
少し待って、
「どこを見てそう思った?」
「根拠になりそうなところはどこ?」
「この二つの選択肢は何が違う?」
と聞いてみる。
時間はかかります。
けれど、その時間に子どもは、自分の読み方を振り返っています。
国語では、正解を教えることより、
自分がどう読んだかを言葉にする時間
が大切なことがあります。
階段の途中にいる子を、伸びていないと決めない
夏休みの終わりに点数が変わっていないと、どうしても不安になります。
でも、国語は階段のように伸びる教科です。
今はまだ同じ高さにいるように見えても、
語彙が増えている。
文章の構造が少し見えている。
問いを正確に読むようになっている。
本文に根拠を探しに戻れるようになっている。
そういう変化が積み重なっていることがあります。
その蓄積がつながったとき、急に一段上がる。
現場では、そういう子を何度も見てきました。
だから、点数が変わらない時期に必要なのは、焦って問題数を増やすことではありません。
今、何が少しずつできるようになっているのかを見ることです。
そして、まだ弱いところを一つずつ整理すること。
国語は、努力がすぐ数字に出ない分、途中の成長が見えにくい教科です。
だからこそ、その見えにくい変化を見つけることが大切です。
夏休みに国語が伸びなかった。
そう結論を出す前に、
次の段差を上がるために、今どんな力がたまっているのか。
一度、答案をそこから見直してみてください。
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